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社長公募の成功事例と失敗事例まとめ|公募がうまくいく条件
採用手法・採用知識社長を外部から公募する「社長公募」という採用手法をご存じでしょうか。新聞広告や転職サイトなどを通じて広く候補者を募り、企業のトップを社外から迎える取り組みです。
経営改革や事業再建を目的として注目されることも多い一方で、社長公募は必ずしも成功するとは限りません。実際には、途中で計画が頓挫したり、就任後に短期間で退任してしまうケースも少なくありません。
本記事では、社長公募の成功事例と失敗事例を比較しながら、うまくいく企業とそうでない企業の違い、そして社長公募を成功させるための条件を整理します。
目次
社長公募のメリット・デメリット
社長公募には、社内では出会えない多様な経営人材と出会えるというメリットがあります。
企業の枠を超えて候補者を集めることで、これまでになかった発想や経営経験を持つ人材が経営トップに就く可能性が生まれます。特に事業再生や新規事業の立ち上げなど、大きな変革が求められる局面では、社外からのリーダー登用が効果的に機能することがあります。
一方で、社長公募にはデメリットも存在します。企業文化や組織の事情を十分に理解していない外部人材がトップに就くことで、社内との摩擦が生じるケースもあります。また、前任経営陣の影響力が強い企業では、新社長に十分な権限が与えられず、結果として経営改革が進まないこともあります。
そのため社長公募を成功させるには、単に優秀な人材を見つけるだけではなく、外部人材が経営を担える環境を企業側が整えることが重要になります。
ソフトバンク株式会社
2010年、ソフトバンクは後継者育成を目的として「ソフトバンクアカデミア」を開校しました。社内外から約4,000人の応募があり、その中から300人を選抜。受講者の約半数はソフトバンク社員で、残りは起業家など社外の人材でした。
しかし2015年、孫正義氏の後継者として元Google幹部のニケシュ・アローラ氏が指名されます。アローラ氏はソフトバンク代表取締役副社長、ヤフー取締役会長に就任し、孫氏からも「私の後継者候補であることは間違いない」と公言されました。
ところが2016年6月、アローラ氏は任期満了をもって取締役を辞任。様々な憶測を呼びながらも、後継者問題は振り出しに戻ったと言われています。
株式会社ユーシン
独立系自動車部品メーカーの株式会社ユーシン(東京都港区)も、社長公募を行った企業の一つです。
創業家2代目として1978年から約30年以上も社長に就任した田邊耕二氏が、2010年に「海外展開を担う人材が社内にいないため、外部から広く集めたい」として新聞広告による募集を開始。
1700人以上の応募の中から元外務省キャリア官僚の八重樫永規氏を選出、2011年に取締役社長代行に就任させました。当初は「半年ほど現場を学んでから社長と副社長に昇格する予定」としていましたが、2012年で八重樫氏は取締役を辞任し、ユーシンを退職しました。
2度目の社長公募とその後
ユーシンは2014年2月に2度目の社長公募に乗り出した。新社長の「最低保証年収」を1億円まで引き上げ募集しましたが書類選考の通過者がなく、打ち切りになりました。その後、取締役3人による集団指導体制に引き継がれました。
その後、2016年11月期決算において96億5900万円の最終赤字に転落し、高齢や業績不振などを理由に2017年1月に田邊耕二氏が辞任。後任には専務から昇格した岡部哉慧氏が新社長になりました。岡部氏はプロパー出身で、3代目社長にして初の非創業家出身のトップとなりました。
株式会社毛髪クリニックリーブ21
株式会社毛髪クリニックリーブ21は大阪市中央区に拠点を置く日本の頭髪に関するサービス業者です。
経営体制の強化と事業拡大を目的に、転職サイト「ビズリーチ」と提携し、2011年8月より約2ヶ月間、次期社長候補の公募を行い、約500名の応募者の中から4名の次期社長候補者を決定しました。
しかし4名の中から次期社長は選ばれず、2015年9月時点で全員退職。4人の中の一人から「当初から引退の意思はなかった」「テレビに出演する話題作りだった」「虚偽の募集で経歴に傷がついた」と主張し、リーブ側に約4000万円の損害賠償を求めることに発展しました。その後、2017年5月12日に大阪地裁は、事実と異なる説明をしたとして慰謝料100万円の支払いを命じました。
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株式会社ジー・モード
オンラインゲーム開発会社ジー・モード(東京都品川区)は2014年、社長の一般公募を実施しました。
最終面接は夏野剛、久夛良木健、森下一喜が行うとされ話題になるも、その後の動向は非公表。社長の異動がないため失敗したと思われます。2015年4月、マーベラスの子会社となり、マーベラス役員の加藤征一郎が社長に就任。
社長公募の成功した企業
社長公募で成功していると思われる会社も調べてみました。
若桜鉄道株式会社
若桜鉄道(わかさてつどう)は、鳥取県八頭郡若桜町に本社を置く第三セクター方式の鉄道会社です。ローカル鉄道の例に漏れず過疎化、少子高齢化、そしてモータリゼーションの発達で経営は危機に瀕していました。
2014年6月に社長を一般公募し、2014年9月に由利高原鉄道のITアドバイザーをしていた山田和昭が社長に就任。その後は「若桜谷観光号」「お買いもの列車」「SL走行社会実験」「ラッピング列車」など数々の経営改善策・乗客獲得策を実行。
全国的な注目を集めたのが、2015年4月に実施した「SLの走行社会実験」。若桜駅構内で展示運転(石炭火力ではなく圧縮空気で動く)していた蒸気機関車に客車を連結し、本線を走らせるというプロジェクトで、地域一丸となって取り組んだ結果、1805万円の経済波及効果、4745万円の広告換算効果がたたき出されたそうです。
いすみ鉄道株式会社
いすみ鉄道株式会社は、千葉県夷隅郡大多喜町に本社を置く第三セクター方式の鉄道会社です。
いすみ鉄道は開業以来、慢性的な赤字に悩まされ続けており、存続の危機に瀕していました。経営立て直しのために2007年12月から社長を一般公募。2008年4月に千葉県のバス会社平和交通社長(当時)の吉田平氏が就任。しかし、2009年2月に吉田氏が千葉県知事選挙への出馬と社長辞任を発表したため、 2009年5月に社長の再公募を発表。
2009年6月、123人の公募の中から元ブリティッシュ・エアウェイズ旅客運航部長の鳥塚亮氏が代表取締役社長に就任。その後は「訓練費用自己負担運転士」「ムーミン列車の運行」「駅の命名権(ネーミングライツ)売却」など数々の経営改善策・乗客獲得策を実行。
その結果、経営回復が認められ、2010年8月にいすみ鉄道の存続が決定しました。2017年現在において社長公募でもっとも成功していると思われる事例です。
社長公募の海外事例
社長公募や外部CEOの登用は、日本よりも海外企業で一般的に行われている経営手法です。特に欧米では、企業の成長段階や経営課題に応じて外部から経営トップを招くケースが珍しくありません。
例えばアメリカの大企業では、取締役会が中心となって外部からCEOを招聘することが多く、企業再建や事業転換の局面では外部経営者が登用されるケースも多く見られます。IBMやマイクロソフトなども、外部から経営トップを迎えた経験を持つ企業として知られています。
海外企業では、経営トップはあくまで「役割」であり、企業の状況に応じて最適な人物を外部から採用するという考え方が一般的です。この点は、日本企業の社長人事と大きく異なる特徴と言えるでしょう。
成功と失敗の分かれ目
事例を比較すると、社長公募が成功している企業にはいくつかの共通点があります。
代表的なのは「就任までの意思決定が早いこと」「新社長に十分な経営権が与えられていること」、そして「企業の存続や再建といった明確なミッションがあること」です。こうした環境では、外部から招いた経営者がリーダーシップを発揮しやすく、組織も変化を受け入れやすくなります。
一方で、失敗した事例では前任者が経営に強く関与し続けたり、新社長の権限が限定されていたりするケースが目立ちます。特に創業社長が在任している企業では、社外から社長候補を公募しても実際の意思決定権が移譲されず、制度だけが形骸化してしまうことがあります。
創業社長を中心としたオーナー企業では、強いリーダーシップが企業成長の原動力となる一方で、経営判断が個人の価値観に大きく左右されやすい側面もあります。
その結果、自分とは異なる考え方を持つ人材を評価しづらくなったり、無意識のうちに「自分の分身」を求めたりする傾向が生まれることもあります。こうした組織文化が残ったままでは、外部から経営者を招いても十分に力を発揮できない可能性が高くなります。
社長公募が失敗する理由
社長公募が注目を集める一方で、実際には途中で頓挫したり、就任後に短期間で退任するケースも少なくありません。その背景には、制度設計や企業側の体制に問題があることが多いと言われています。
最も多いのは、新社長に十分な権限が与えられていないケースです。前任者や創業者が経営に強く関与し続ける場合、新しく就任した社長が意思決定を行えず、結果として経営改革が進まないことがあります。
また、企業側が理想的な人物像を求めすぎることで、現実的な候補者が見つからないケースもあります。こうした状況では、社長公募は話題作りに終わり、実際の経営改革にはつながらない可能性があります。
まとめ
社長公募は、社内では出会えない多様な候補者と出会える可能性がある一方で、実際にはうまく機能しないケースも少なくありません。
その大きな要因は、企業側が理想的な人物像を求めすぎてしまう「ないものねだり」や、前任経営陣の影響が強く残り、新社長に十分な権限が与えられないことにあります。
社長公募を成功させるためには、単に人材を外部から募集するだけではなく、選ばれた人物に経営を任せる覚悟と権限を企業側が持つことが重要です。制度として公募を行うだけでなく、経営体制そのものを見直す姿勢が求められると言えるでしょう。

