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送別会の経費がなくなったベンチャー企業の話
最近、あるベンチャー企業で働く若手社員から聞いた話が、少し考えさせられる内容でした。
その会社では、社員やインターンが退職する際に行っていた送別会の会社補助がなくなったそうです。送別会そのものは禁止ではありません。ただ、会社からの経費や補助は出ない。完全に自腹です。
理由を聞くと、とてもシンプルでした。
「最近、退職者が多いから」
その若手社員によると、この方針は上層部の会議で決まったそうです。会社に残らない人に、積極的に経費を使う必要はない。送別会の費用が積み重なると意外と大きな金額になる。だったら、その分を社内に残る人のために使った方がいい。おそらく社長の発言でしょう。
確かに、経営の視点で考えれば理解できなくもありません。辞める人に対してお金を使う意味があるのか、という議論はどこかのタイミングで必ず出てくるものです。
ただ、この話を聞いたとき、私は別のことを思いました。
ああ、この会社は今、送別会が多いんだな。
会社の制度というのは不思議なもので、組織の状態がそのまま表れます。人が採れない会社は急に副業を解禁しますし、残業問題が表面化すると勤怠管理が急に厳しくなります。
そして退職者が増える会社では、送別会が増えます。
送別会が増えすぎると、今度はその送別会自体が問題になります。また誰か辞めるのか。最近多いよね。この会社大丈夫かな。
本来は「お疲れさまでした」と送り出す場だったはずなのに、いつの間にか組織の不安を象徴するイベントになってしまう。そういう会社は、意外と少なくありません。
そうなると経営側は考えます。
そもそも、このイベントは本当に必要なのか。
そして制度が静かに変わります。上層部の会議で方針が決まり、送別会の補助は廃止。イベント費用の見直し。社内交流費の再検討。
外から見ると、とても小さな制度変更です。でも会社の中にいる人からすると、意外と象徴的な変化だったりします。なぜなら、その理由が見えてしまうからです。
「ああ、この会社、辞める人が増えているんだな」
さらに言うと、こうした決定は残っている社員のモチベーションを上げるわけでもありません。むしろ、少し白けた空気が流れることが多い。会社として合理的な判断なのかもしれませんが「辞める人にはお金を使わない」というメッセージは、同時にこうも聞こえてしまうからです。
この会社に長くいる理由って何だろう。
実はこうした話は、外部から見ていると意外と分かりやすいものです。「そんなことをしたら、残っている従業員のモチベーションも落ちるだろう」と感じる人は少なくありません。しかし不思議なことに、こうした影響に経営者自身が気づいていないケースも多いのです。
組織文化というのは、福利厚生の豪華さよりも、こうした小さな判断の積み重ねで形作られます。送別会の補助がなくなること自体は、大した話ではないかもしれません。
ただ、その背景には必ず組織の状態が映っています。
会社というのは不思議なもので、本当に重要な変化ほど、こういう小さな制度変更の形で現れるものです。

