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Wantedlyを運営するウォンテッドリー株式会社が、東証マザーズへの上場承認を受けました。2017年9月20日上場予定というニュースは、HR業界・スタートアップ界隈を中心に大きな注目を集めています。
本記事では、公開資料や市場環境を踏まえながら、IPOに対する評価や世間の評判、そして今後の成長可能性について率直な視点で考察していきます。
目次
ウォンテッドリー株式会社について
ウォンテッドリー株式会社は2010年9月設立からちょうど7年後に上場予定。平成28年8月期(第6期)の売上は8.4億、経常利益は1.2億となっています。今期も売上は順調に推移しており、第3四半期連結累計期間の営業収益が9億円とすでに前年度の売上を超えています。
代表取締役の仲暁子さんは32歳という若い経営者で、問題なく上場すれば最年少女性社長の記録を大幅に塗り替えることになります。調べたところ、これまでの女性社長としての最年少上場記録はトレンダーズ株式会社の経沢香保子さんの39歳でしたので、一気に6歳も更新されることになります。※株式上場の最年少記録保持者は転職会議運営のリブセンス村上社長の25歳です。不滅の日本記録だと思います(笑)
一部では売上8億円、利益1億円の会社に想定時価総額40億円は高すぎるという意見もありますが、売り手市場、赤字上場ではなく当期純利益ベースで黒字化できている点、サービスの知名度、ストックビジネス型(月額課金型)を総合的に評価すると妥当だと思います。
個人的にウォンテッドリー社は話題先行型の企業で、最近のスタートアップ企業の中でも天才的にブランディングが上手い印象です。知っている人も多いですが初期のサービスの頃は使い勝手が悪く、評判は結構悪かったです。プロダクトとして見切り発車の部分も見受けられましたが、最近では中身が伴ってきて売上も追いついてきた結果が上場に繋がったと思います。
有価証券報告書について
有価証券報告書では2017年5月の月間個人ユーザ78万人、企業数ユーザ数は約2万社、月間利用者数は151万人となっています。わかりやすく翻訳すると月間UU151万人、(退会会員数を含めていなければ)会員登録数78万人です。
アクセス数はWantedly Feedとの合算値なのか、企業数は有料会員と無料会員の比率が気になりますね。決算説明資料でわかりやすく説明してくれることに期待したいと思います。
ストックオプションについて
社員にストックオプション(新株予約権)を全然発行しておらず、創業者の仲社長が約70%保有していることに非難する意見があります。
これはそこまで問題視することはないと思います。創業社長として70%は健全な保有率ですので、流石ゴールドマンサックス出身の経営者だと思っています。
某人材系企業も上場時点では従業員持株会なんて壊滅状態でしたが、上場後に従業員持株会の比率が高まった事例もあります。自己資本比率も63%と安定経営ですね。(役員の人は少し残念だとは思いますが…)
Wantedlyについて
一般的には転職媒体という認識が強いかと思いますが、事業内容としての名目はビジネスSNS事業になっています。
ビジネスSNSの意味では海外ではLinkedIn(リンクトイン)が有名ですが、日本ではリンクトインの知名度は全くありません…。一見すると日本に競合他社はいないように見えますが、採用市場全体で見ると競合他社だらけです。(^^;
Wantedlyはビジネス名だけで判断するとリンクトインと同じ立ち位置に見えますが、企業が求人情報を掲載して、ユーザーが求人情報に応募する流れなので、従来の転職サイトと使い方は全く同じなんですよね。
こまかい部分の違いはありますが、掲載費用を支払って掲載する仕組みも従来の転職サイトと同じなので、競合他社はリクナビNEXTやマイナビ転職といった求人情報メディアです。新しい採用メディアと評価する人もいますが、個人的には目新しさはないと思っています。
世間ではWantedlyを転職サイトとして取り扱っていますが、あくまでウォンテッドリー株式会社はビジネスSNSと一貫して説明することが以前から気になっていました。
転職媒体と説明したほうがわかりやすいのは一目瞭然ですが、ブランディングとしてビジネスSNSというポジション・名称にこだわっているのか不思議に思っています。
Wantedlyの特徴について
Wantedlyはサービスの特徴として給与等の条件でのマッチングではなく、ビジョンや価値観でのマッチングに主眼を置いています。
確かにそれも大事ですが、求職者ユーザーは給与を一番重要視しています。給与は最低限の判断材料として必要不可欠だと思っているので、給与を表示する項目がないことに違和感があります。
面接(もしくは雇用契約書を締結する際)で初めて年収を公表される仕組みに対して、ブラック企業の温床にならないかが気になっています。
ビジョンや価値観の共感だけでは決して仕事は長続きしません。働くモチベーションはやりがいだけではないと思うんですよね。
Wantedlyの難しさについて
メディアプラットフォーム「Wantedly Feed」と呼ばれるブログ機能がありますが、Wantedlyでの採用の成否を分けるポイントになっています。
従来の求人情報メディアのように、掲載料金の中に原稿制作料が含まれていないため、掲載企業自らで作成しないといけません。また定期的に記事を更新する必要があります。
有価証券報告書でも投稿があるかないかで応募数が約2.9倍違うらしいです。企業側に情報発信能力があるかないかで雲泥の差が出ると言えます。魅力的な情報発信能力は非常に難しいので、活用方法が非常に難しいメディアです。
好意的に解釈すれば広告費用に関係なく、中小企業でも目立てる可能性があります。しかし、現実的には大手企業で専任の採用チームや採用担当者がいるほうが(更新する余裕があるため)情報発信がしっかり出来ており、中小企業や田舎の企業は非常に不利な立場になっています。
Wantedlyのアクセス数について
有価証券報告書の事業の説明においてWantedly Feedは、Wantedlyのサイトのページビュー全体の約10%を占めるそうです。一方で、業績の概要では月平均で50万ページビュー維持しているとも記載されています。
つまり、Wantedlyサイト全体の月間ページビューは約500万PV数だと推測できます。月間利用者数は151万人なので、単純計算で一人平均3PVになりますね。
今後の成長戦略について
東京証券取引所が開示している経営指標の推移でもわかりますが、市場環境の後押しやIPOでの知名度向上もあり、今後も順調に伸びると思います。
感覚値になりますが売上20億~30億円くらいまでは順調に成長すると思っています。アクセス数も151万人と全然低いので、まだまだ伸びる余地が残されています。
ただし、売上はその後が現在のままだと厳しいと思います。まだまだ掲載企業がIT/WEB系企業に偏っていることや、難易度の高いエンジニアやデザイナーの正社員募集を中心にしていると応募数に限界があるからです。
名刺管理ツールなどすでに新規事業を手掛けていますが、未来の成長戦略として海外展開するのか、新規事業を頑張っていくのかに注目していきたいです。
まとめ
スタートアップ界隈では「上場ゴール」という言葉が揶揄的に使われることもあります。しかし、ウォンテッドリー社にとって今回のIPOはゴールではなく、新たなスタートラインに立った瞬間だと感じています。
市場からの期待と責任を背負いながら、サービスの進化と事業領域の拡張を続けていけるかが真価を問われるフェーズです。今後も経営理念である「シゴトでココロオドル人をふやす」を実装し続けられる企業であってほしいと期待しています。

