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マダムシンコ「求人詐欺」裁判から学ぶ求人リテラシー
雑記・日記・備忘録ネット上でも騒がれたマダムシンコ「求人詐欺」問題。マダムシンコ側が法廷で説明した内容は、求人広告屋としても求人企業との信頼関係が根底から崩れる深刻な問題だと感じました。
大手求人サイトでもこうしたブラック求人は溢れています。求職者はブラック企業という言葉は知っていても、具体的な手口や回避方法、または労働法の知識を知らない人も多いでしょう。私自身も人材業界にいなかったら労働法の知識なんて知らずに生活していたと思います。
今回はブラック企業で働かないために知っておくべき求人リテラシーについて解説します。
マダムシンコ「求人詐欺」問題とは
人気洋菓子店「マダムシンコ」を運営する株式会社カウカウフードシステム(大阪府大阪市)が求人サイト「インディード」で嘘の求人募集をかけたことがキッカケで、労働裁判になった問題です。
経緯として求人サイトのインディードには「月給35万円以上~50万円(みなし残業代含む)」と記載され、募集していた。元従業員で原告となった男性は人事担当者との面談でも試用期間(3か月)後の月給が35万円と口頭で説明されたので内定を承諾。
しかし、試用期間中は25万円だった月給が3か月の試用期間終了後には月給17万円にダウンした。募集内容と全然違っていたため、元従業員の男性は退職。元従業員が労働審判申し立てするに至りました。
カウカウフードシステム側は「インディードの広告は閲覧者を増やすために給与額を高く表示したものに過ぎない」と主張し「雇用契約の労働条件ではない」と争う姿勢を示したそうです。
裁判の結果、大阪地裁はカウカウフードシステムに対して約90万円の支払いを命じました。
求人広告屋が考える一番の問題部分
一番の問題点は雇用契約書(労働条件通知書)を採用時に渡していない点です。
裁判でもここが争点になりました。雇用する際に労働条件を明確に示していないのは労働基準法違反です。カウカウフードシステムは元従業員が働き始めて1カ月後、会社から雇用契約書を示したそうです。
個人的には求人メディアに(結果的に)嘘の求人が載っていたことは、必ずしも悪ではないと考えています。
今回のように最初から騙す気で嘘の求人を掲載するのは当然NG(職業安定法第65条違反)ですが、本人のスキルや志向性によって、違う職種を提案することもあるからです。
例えば中途採用の面接では「人物は素晴らしい。応募職種にはスキル不一致で合格できないけど、違う職種・部署では合格ラインだ」ということがあるからです。
アルバイト採用では「住所が〇〇なら、姉妹店の〇〇のほうが近いけど、そっちで働く気はない?」と提案される可能性もあります。
こまかい話をすると「求人情報で間違った情報をわざと載せていた」だけなら労働基準法違反になりません。一番大事なのは雇用契約書(労働条件通知書)です。ここでお互いが書面に書かれた内容に合意することで法的な効力が発揮されます。
面接の際に「給料を含めた正しい労働条件はこの書面に書かれています。求人サイトとは違っているけど、この条件でも良いですか?」と説明し、その内容に同意していれば、仮に求人サイトより低い給与でも本人の責任になります。
もしも口頭で説明するだけなら、ヤバいですね。雇用契約書(労働条件通知書)がないところはブラック企業確定なので速攻で退職する、または入社を避けるべきです。
まとめ
今回はインディードでしたが、タウンワークやマイナビバイトでも起こりうる可能性があります。(ちなみに現在もエンゲージで売り場スタッフを募集しています。)
特殊詐欺グループも闇バイト募集をインディードを活用していることが明らかになっていますが、プラットフォームの求人メディアのチェックは限界があるため、これからは労働者側もしっかりとした知識を身に着け武装しなければいけません。
こうしたブラック企業に出会って、裁判になっても誰も得はしないです。悲しいことが起きないように労働法は勉強してほしいと思います。