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【2017年版】求人広告メディアの変遷と今後10年の展望
求人広告業界はこの10年で大きな転換期を迎えました。リーマンショック後の市場縮小、スマートフォンの普及、紙媒体の衰退など、環境の変化とともにプレイヤーの勢力図も変わりつつあります。
本記事では、2017年時点での市場の「今」を整理しつつ、2030年に向けて求人メディアがどう進化していくのか、過去の流れと未来の可能性を紐解いていきます。
目次
この10年で何が起きたのか?求人メディアの構造変化
この10年間、新卒・中途・アルバイトといった各領域において、主要な求人メディアや運営企業の顔ぶれはほとんど変わっていません。
人材業界自体の参入障壁は比較的低いものの、認知度と信頼性が重要視される市場特性から、大手メディアの牙城は依然として堅固です。
新卒市場:リクナビ・マイナビの二強が継続
新卒採用市場では、リクナビとマイナビによる二強体制が続いています。
少子高齢化や求人倍率の変動により、母集団形成や内定辞退対策、内定者フォローといった周辺サービスが進化しましたが、主要プレイヤーの地位に変化はありません。
2大横綱の牙城を崩そうと『脱ナビ』を公言するサービスは多く、逆求人やダイレクトリクルーティングなどの新しいアプローチも登場しましたが、未だ主流には至っていません。
アルバイト市場:大手メディアの安定
アルバイト求人では、バイトル、タウンワーク、マイナビバイト、インディードの4社が市場を牽引しています。
続くフロムエー、an、イーアイデム、エンバイトなども依然として上位を維持しており、この10年間でのプレイヤー交代はインディードの台頭を除けば限定的です。
紙メディアの終焉と求人情報誌の衰退
2008年のリーマンショックを機に、アルバイト系の有料求人情報誌や折込求人誌は激減しました。
ビーイング、フロムエー、ガテンなどかつての大手情報誌も相次いで休刊となり、紙媒体の存在感は大きく後退。2017年時点では、紙媒体に掲載される求人広告数は2004年の20万件超から約3万件まで激減しています。
唯一紙を残す「タウンワーク」は、差別化と希少価値を意識した経営戦略とも捉えられます。完全なネットシフトでは埋没リスクがあるため、物理的な存在感を維持することでブランドを際立たせていると考えられます。
新興メディアの登場と挑戦
中堅以下では新陳代謝が活発です。
リブセンスのマッハバイト(旧ジョブセンス)や転職ナビ、インターワークスの工場ワークス、アトラエのGreen、ウォンテッドリーのWantedlyなどが新興メディアとして台頭してきました。
各社とも独自領域で存在感を示しているものの、サイト規模としては年商10億〜20億円のニッチなポジションにとどまっています。
各企業は求人市場の拡大よりも、名刺管理ツール開発、賃貸サイト運営、ビジネスパーソン向けマッチングアプリといった他分野への多角化戦略をとり、新たな収益源を模索しています。
スマホ普及が変えた求人検索体験
2007年のiPhone登場以降、スマートフォンの急速な普及は求人メディアの利用形態に大きな影響を与えました。
総務省の統計によれば、2016年時点で10代のスマホ普及率は94%、30代で81%、60代でも47%。地方でもガラケーよりスマホの普及率が上回っています。
これにより、求人検索はPCからスマホ・アプリ中心に完全に移行。現在では、レスポンシブ対応やスマホ最適化が当たり前となり、スマホシフトは求人メディア運営の前提条件となっています。
求人サイトのリニューアルが意味するもの
求人サイト各社は、継続的にリニューアルを重ねています。その目的は単なる見た目の刷新や新機能追加にとどまらず、以下のような多面的な改善を伴います。
- Googleアルゴリズムへの適応
- デバイス最適化(特にスマホ対応)
- 営業・制作現場の効率化
- ユーザビリティの改善
これらを通じて、サイト全体の健全性と直感的な操作性を両立させ、ユーザー・広告主・運営者の三者にとってバランスの取れた設計が求められています。
求人業界を取り巻く社会課題と構造的変化
労働人口の減少は避けることができないため、今後は常に採用が難しい局面が続くと予想されます。
ブラック企業やブラックバイト問題、大卒の早期離職など、労働市場が抱える構造的課題は依然として深刻です。生産年齢人口の減少によって労働力不足が常態化し、企業には多様な働き方(副業・リモートワークなど)の整備が求められています。
また、日本政府は外国人労働者の受け入れを推進していますが、制度面・社会面での課題が山積しており、次の10年では多民族化や文化的摩擦も社会問題として浮上する可能性があります。
AI・ディープラーニングと求人メディアの未来
テクノロジー分野との連携も進んではいますが、求人メディアにおける技術活用は限定的です。
AIやディープラーニングの進展により、レコメンド機能やマッチング精度の向上は期待されるものの、情報の正確性や信頼性がより重要視されるため、技術的な差別化は生まれにくい状況です。
一方で、人材紹介業との相性は良好で、AIによるマッチングの高度化が進めば、求人広告との境界線も曖昧になっていくでしょう。
2030年、求人広告メディアはどう変わるのか?
Google依存の行方とメディア再編の可能性
求人メディアを含むWebメディア全体が、Google検索エンジンへの依存を強めている状況です。
プラットフォームの変化──例えばGoogleの衰退や新たな検索体験の登場──は、求人メディアの勢力図にも影響を与えるでしょう。
ただし現時点では、Googleに匹敵する検索プラットフォームは存在しておらず、YouTubeやInstagramなどSNSの影響力が増す中でも、Google中心の構造はすぐには変わらないと見られます。
仮にプラットフォームが変化しても、求人広告メディアの中心を担うのは資本力と信頼性を持つ大手企業である可能性が高いです。致命的な失策がない限り、現在の主要プレイヤーが2030年においても業界の中心に居続ける構図は大きく崩れないでしょう。