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求人媒体の多言語化は必要ない?外国人採用で直面する3つの課題
求人広告・求人媒体近年、日本では外国人労働者の数が年々増加しており、求人媒体も「多言語対応すべきではないか」という議論が広がっています。英語や中国語、ベトナム語などに翻訳すれば応募者数は確かに増えるでしょう。
しかし実際の採用現場では、日本語能力や企業側の受け入れ体制の問題から「求人媒体の多言語化はむしろ逆効果になりかねない」という課題が見えてきました。
本記事では、外国人採用の現状を踏まえつつ、求人媒体の多言語対応が抱える3つの問題点を具体的に解説します。
目次
理由1:多言語化で応募の質の低下
外国人採用における最大の課題は、日本語によるコミュニケーション能力です。
求人媒体を多言語化すれば応募者数自体は確実に増加します。しかし、日本語スキルが不十分な応募者が母国語で求人情報を見て応募しても、実際の採用につながるケースはほとんどありません。
その結果、外国人雇用を希望しない企業にとっては、採用基準を満たさない応募が増えるだけで、選考コストや顧客満足度の低下を招いてしまいます。つまり、求人媒体の多言語対応は単なる応募数の増加にとどまり、採用の質を下げるリスクが高いのです。
理由2:外国人を歓迎している企業はまだ少数
多言語化したところで外国人を歓迎している募集企業が少なければ意味がありません。マイナビバイトで調査したところ東京都で約44000件の案件に対して「留学生歓迎」で絞り込むと約4400件(10%)が該当しました。
そこそこ多いように感じるかもしれませんが、表示されている案件で積極的に募集している企業は少ないです。
実際に「留学生歓迎」で表示された募集案件を見ても必須スキルにどの程度の日本語レベルが必要なのかを書いている企業はほとんどいませんでした。
また「日本人と同等レベルの日本語が喋れることが必須」といった高い採用ハードルを設定している企業も多いです。流暢に話せるかどうかが採用基準になっているため日本語レベルN1(日本語能力試験の最高峰)を持っている子でも不採用になります。
いわゆるボリュームゾーンである日本語レベルN3~N4レベルの日本語が下手な外国人留学生でも雇用する企業は感覚値ですが全体の1%前後です。
理由3:求人原稿は翻訳が難しく文化的な壁がある
日本の求人原稿は和製英語が多く、日本独自の文化が多く含まれているため翻訳できない部分が多いです。
例えば仕事内容でよく書かれている「いらっしゃいませと元気よく接客してください」の「いらっしゃいませ」は日本語独特の表現になります。直訳するとウェルカムになりますが、英語圏ではお店に入ってきた人にウェルカムとは言いません。
国によって文化・宗教が違うのも意識しなければいけません。例えばトイレ清掃と言っても国によっては水洗式ではない国もありますし、便座の形が違い過ぎて混乱する外国人の方もいると思います。このように文章をただ翻訳すればいいという問題ではありません。
グーグル翻訳など無料で利用できる自動翻訳ツールもありますが、いまだ精度は低く原文の意味とは異なる意味になってしまいます。求人広告で自動翻訳ツールの利用だけは絶対に止めておいたほうがいいです。
番外編:応募画面の設計も多言語対応には課題が多い
求人媒体を多言語対応させる場合、応募画面の設計も見直さなければなりません。たとえば日本人向けの求人サイトでは、一般的に「苗字」と「名前」を分けて入力する仕様になっています。
しかし東南アジア系の外国人応募者の場合は「グエン・スアン・フック」「ロドリゴ・ロア・ドゥテルテ」などミドルネームを持つケースが多く、既存の設計では正しく登録できないことがあります。
また、苗字と名前を同一項目で入力させている場合でも、企業側からは「管理上の都合で分けてほしい」という要望が多く寄せられます。外国人の名前は境目がわかりにくいケースも多いため、応募画面を多言語化・多国籍仕様に改修する必要があり、求人媒体にとっては大きな負担となります。
まとめ:多言語対応の前に取り組むべきこと
技能実習や特定技能など外国人採用のニーズが高まる中で、求人媒体の多言語化は一見すると有効な解決策のように映ります。しかし現状では、日本語力の不足や企業側の受け入れ体制の不備が原因で、むしろ採用の質を下げてしまうリスクが大きいのが実情です。
だからこそ、まずは日本語教育の支援や現場での受け入れ体制を整備し、外国人材が活躍できる環境を整えることが先決です。その基盤が整って初めて、多言語対応は企業と外国人双方にとって価値ある仕組みとして機能するでしょう。
当社では外国人採用について興味を持っている企業様をお待ちしております。