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2016年の最低賃金改定によるアルバイト雇用の基礎知識と注意点
厚生労働省は2016年6月14日、企業が従業員に支払う最低賃金(時給)の目安を決める中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)を開き、2016年度の改定に向けた議論を始めたというニュースが流れていました。
今回はアルバイト・パートを雇用している企業に知ってほしい最低賃金に関する基礎知識と注意事項をまとめました。
目次
2016年の最低賃金改定スケジュールと改定額の目安
例年通り、2016年も10月以降に都道府県ごとの最低賃金が順次改定されます。現在は、各地域の審議会で改定額に関する答申が出そろっている段階です。
東京都では、2016年9月2日に最低賃金が「932円」に確定しました。前年度の907円から25円の引き上げとなり、企業はこの水準を下回らないよう注意が必要です。
改定後の地域別最低賃金は、厚生労働省の公式サイトで9月中に一覧公開される予定です。対象地域の情報を早めにチェックし、社内制度や求人情報に反映させておきましょう。
最低賃金アップがアルバイトのモチベーションに与える影響
最低賃金の改定時、多くの企業では10月から求人広告の表記や時給水準を変更します。しかし、既存のアルバイトスタッフにとっては「新入りと同じ時給になる」ことで、不満やモチベーション低下を引き起こす可能性があります。
たとえば、東京都で7月から907円で働き始めたアルバイトが、10月の改定で932円に昇給しても、同じタイミングで入社した新人も最初から932円という状況になります。
特に、研修期間を設けている企業では、頑張って仕事を覚えた人が新人と同じ給与という不公平感を覚えやすく、「やる気がなくなる」「辞めたくなる」といった結果にもつながりかねません。
こうした事態を避けるには、9月以前に段階的な給与見直しを行うなど、あらかじめ既存スタッフへの配慮を行うことが重要です。
政府の最低賃金引き上げ方針|時給1,000円への道筋
労働生産性の向上を支援し、更なる賃上げにつなげるとともに、最低賃金について時給1,000円(全国加重平均)を目指します。
引用:もっと知りたい!自民党の若者に関する政策 | 自由民主党
自民党の若者に関する施策の中で「雇用と所得の拡大」の目的のために政府は将来的に時給1000円を実現しようと考えています。安倍総理も2015年11月24日の経済財政諮問会議で「最低賃金を年率3%程度を目途として引き上げていくことが必要であります。
これにより全国平均1,000円となることを目指します」と発言して話題になりました。
つまり、全国平均1000円になるまで最低賃金は毎年上昇すると考えられます。
現在のペースで上昇すれば、2017年は時給950円、2018年は時給975円、3年後の2019年には東京都の最低給与は時給1000円になります。
現在最も高い東京都では907円。 最も低い都道府県では、鳥取・高知・宮崎・沖縄の693円。 最低賃金は都道府県によって最大214円の差があります。現在の全国平均798円が、毎年年率3%上昇していけば単純計算で2023年には全国平均が1000円に達する予定です。
人件費の試算|最低時給30円アップでどれだけコスト増?
最低時給が30円上がった場合の人件費にあたえる影響力の試算です。8時間勤務してくれるフリーターが早番と遅番で合計5名体制と小規模な店舗を想定して計算しました。
30円×1日8時間×勤務5名×30日×12ヶ月=年間43万2000円(1ヶ月3万6000円)
例えば株式会社すかいらーくは約8万人もの「クルー」と呼ばれるアルバイト・パートが働いています。(2015年12月31日現在)
全国で30円上がれば、毎日の稼働人数が3万人、1日の平均労働時間5時間だと想定すれば、30円×1日5時間×3万人×30日=1億3500万円。月に約1億3500万円の人件費が上がります。
最低賃金の適用範囲と罰則|うっかり違反に要注意
最低賃金は、高校生や研修中のアルバイトも含めてすべての従業員に適用されます。
たとえ出勤回数が少なくても、法定の時給以下を支払うことは許されません。「高校生だから時給500円でいい」「研修中だから最低賃金未満でもOK」といった誤った運用は、最低賃金法違反となります。
違反が発覚すると、最低賃金法第40条に基づき、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、従業員から労働基準監督署へ通報された場合、是正勧告や企業名の公表など、企業イメージにも大きな影響を与えるため注意が必要です。
まとめ|改定に向けて今から準備すべきこと
最低賃金の改定は毎年行われていますが、影響は求人表記の修正だけにとどまりません。既存アルバイトの処遇・人件費の再計算・法令遵守の徹底など、多くの対応が必要になります。
直前になって慌てることがないよう、夏の時点から情報収集と社内準備を進めることが大切です。
最低賃金を下回ると、法的リスクだけでなく企業の信頼にも関わります。雇用主として正しい情報を把握し、働く人にも安心してもらえる体制を整えましょう。