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震災6年目に考える東北地方の求人動向と雇用課題

2011年3月11日に発生した東日本大震災から、早くも6年が経ちました。2017年現在も復興作業は続いており、除染作業やインフラ整備に関連した求人がネット上で話題になることもあります。
先日、福島県の除染作業員の募集がネットで拡散され「まだ募集しているのか」と驚いた声も多く見られました。年月が経つにつれ、被災地への関心が薄れていく一方で、現場ではまだ人手が必要とされている現実があります。
復興特需の終焉と地域経済の実情
私自身は過去に宮城県と福島県には行ったことがありますが、岩手県・青森県・秋田県には一度も訪れたことがありません。
岩手の不来方城、青森の弘前城、岩手の釜石シーウェイブスは一度は見たいと思っていますが、なかなかタイミングや機会に恵まれず、いまだに実現できていません。
テレビでも「被災地のいま」を伝える特集が増えていますが、最近放送されたある番組では、被災地で飲食店を営む方がインタビューに応じていました。
「震災直後から数年間は観光客やボランティアの方々で街が活気づいたが、ここ最近はすっかり客足が落ちた」とのこと。テレビでは「落ちた」と表現していましたが、私としては「元に戻った」だけなのではないかと感じています。
というのも、震災前から東北地方の多くの地域は、観光産業や地場産業の縮小、高齢化、人口減少といった構造的な課題を抱えていたからです。震災を機に一時的な復興特需が生まれたものの、根本的な産業基盤の再生には至っていないのが現実です。
東北地方の求人数は本当に少ないのか?
2017年3月11日時点のバイトルの都道府県別掲載件数は以下です。
- 東京都:31300件
- 神奈川:14900件
- 青森県:652件
- 岩手県:722件
- 宮城県:3522件
- 秋田県:605件
- 福島県:1744件
地方部、特に青森・岩手・秋田のような人口が少ないエリアでは、求人件数が極めて少ないことがわかります。
また、求人の多くが全国チェーンのコンビニや飲食店、工場派遣に集中しており、地域に根ざした産業の求人は限定的です。
被災地特有の雇用問題とは?
震災直後は、復興需要や応援消費によって宿泊業・飲食業・観光業が活況を呈しました。補助金・義援金・復興事業などによって地域経済が一時的に潤い、雇用も生まれていました。
しかし、数年が経つと需要は落ち着き、観光客や応援消費も減少。テレビで紹介されたとある飲食店主も「震災のあと数年は繁盛していたが、今は元に戻った」と語っていました。
実は「元に戻った」状態は、震災以前から続いていた構造的課題そのもの。人口流出、高齢化、産業空洞化…。震災をきっかけに少し盛り上がったとしても、根本的な問題解決には至っていないのです。
今後、東北で雇用を守るには?
では、東北地方の雇用を維持・創出するにはどうすれば良いのでしょうか。いま注目されているのは以下のような取り組みです。
- Uターン・Iターン促進: 首都圏からの若者移住を支援し、地域に人を呼び戻す
- リモートワーク: 都市部の仕事を地方に持ち込む新しい働き方
- ローカルベンチャー支援: 地元資源を活かした小規模事業への助成・伴走支援
- 企業誘致・産業集積: バイオ・再生エネルギー・農業6次産業化など
いずれにしても「東京と同じことをしても雇用は生まれない」という前提を持ち、地域に根差した独自モデルが必要です。
まとめ|求人がある=雇用が安定とは限らない
震災から6年経った今、求人件数が戻ってきた地域もありますが、それが即ち「安定した雇用の場がある」わけではありません。
特に地方の構造的な課題「産業の衰退・若年層の流出・高齢化」は依然として解決されていません。
東北の雇用は今、次のフェーズに向かっています。単なる復興雇用ではなく、地域を持続させるための未来志向の仕事づくりが求められています。