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キャリアアップ助成金とは?正社員転換制度と採用現場から見た問題点
日常記録・雑感備忘キャリアアップ助成金を利用して「アルバイトから正社員化すれば57万円もらえる」と聞いたことはありませんか。
一見すると魅力的な制度ですが、採用現場ではこのスキームを前提にした結果「応募が集まらない」「採用コストが逆に高騰する」といった本末転倒なケースも少なくありません。
本記事では、キャリアアップ助成金の制度概要を押さえつつ、求人広告の現場から見たリアルなメリット・デメリットを解説し「本当に活用すべきケース」と「やめたほうがいいケース」を具体的に解説します。
目次
キャリアアップ助成金とは
厚生労働省が実施している助成金制度の一つに「キャリアアップ助成金」があります。
2013年に開始された制度で、有期契約労働者や派遣労働者など、いわゆる非正規雇用の労働者のキャリアアップを支援することを目的としています。企業が従業員の処遇改善や正社員化を進めることで、労働者の意欲や能力の向上を促し、安定した雇用環境の実現につなげることが狙いです。
補助金のように審査を通過した企業だけが受給できる制度とは異なり、キャリアアップ助成金は一定の条件を満たせば支給される仕組みになっています。融資ではないため返済の必要もなく、企業にとっては人材育成や雇用環境改善を後押しする制度として活用されています。
キャリアアップ助成金の主な条件
キャリアアップ助成金には複数のコースがありますが、代表的なのが「正社員化コース」です。
これは、有期雇用の労働者(アルバイト・契約社員など)を正社員へ転換した企業に対して助成金が支給される制度です。企業規模や条件によって金額は異なりますが、中小企業の場合は1人あたりおよそ57万円が支給されるケースもあります。
厚生労働省の調査では、正社員として働きたいにもかかわらず非正規雇用で働いている人が多く存在するとされています。こうした状況を背景に、企業に正社員化を促す仕組みとしてキャリアアップ助成金が導入されました。制度の本来の目的は、非正規雇用の労働者が安定した雇用に移行できる機会を増やすことにあります。
助成金目的の採用が起きている問題
しかし現場の採用活動を見ていると、この制度の本来の目的から外れた使われ方をしているケースも見受けられます。
本来であれば最初から正社員として採用できるにもかかわらず、助成金を受給するためにあえてアルバイトや契約社員として採用を行う企業が存在するのです。
制度上は違法ではないものの、助成金を前提とした採用設計になってしまうと、本来の採用目的と制度の趣旨がズレてしまいます。結果として、採用活動そのものに悪影響を及ぼすケースも少なくありません。
キャリアアップ助成金のメリット
キャリアアップ助成金は、有期雇用の労働者を正社員に転換する企業を支援する制度であり、企業と労働者の双方にとってメリットがある制度です。
企業側にとっては、正社員化を進めることで最大数十万円の助成金を受け取ることができ、人件費の負担を軽減しながら人材の定着を促すことができます。また、非正規雇用の従業員にキャリアアップの機会を提供することで、従業員のモチベーション向上や離職防止につながる効果も期待できます。
一方、労働者にとっても、安定した雇用形態へ移行できることは大きなメリットです。正社員になることで給与や福利厚生が改善されるケースも多く、長期的なキャリア形成につながります。
このようにキャリアアップ助成金は、本来であれば企業と労働者の双方にメリットをもたらす制度です。ただし制度の使い方を誤ると、かえって採用活動に悪影響を与えるケースもあるため注意が必要です。
キャリアアップ助成金のデメリット
助成金目的のアルバイト採用は応募が集まりにくい
助成金を受給すること自体は違法ではありません。しかし求人広告の専門家の視点から見ると、助成金を前提に「アルバイト採用から始めて正社員転換」という設計にすると応募数は大きく落ちる傾向があります。
実際に、正社員募集であれば採用できた可能性がある求人を、アルバイト求人として掲載したことで応募が集まらず、採用に失敗した事例も少なくありません。
その大きな原因は、アルバイト募集なのに正社員と同じ勤務条件や責任を求めてしまうことです。
たとえば週5日フルタイム勤務が前提の場合、学生や主婦など一般的なアルバイト層は対象外になります。一方で、正社員として働きたい求職者がアルバイト求人を積極的に探すケースも多くはありません。
即戦力となる人材ほど、同じ仕事内容・条件であればアルバイトではなく正社員として働ける企業を選びます。雇用形態がアルバイトである時点で、安心感や将来性に差が生まれてしまうためです。
助成金より採用コストが高くなる可能性
キャリアアップ助成金を活用しても、結果的に採用コストが高くなるケースは少なくありません。
雇用形態だけアルバイトと正社員で、それ以外の条件が同じ求人を出した場合、感覚値として採用単価は2〜3倍になることもあります。つまり、助成金を得るために求人広告費が大きく膨らむ可能性があるということです。
たとえば本来18万円で採用できる求人が、アルバイト募集にしたことで54万円かかった場合、助成金57万円を受給しても実質的な利益はわずか3万円です。
さらに、助成金申請の手間や人件費の工数、本人希望によりアルバイトから正社員への転換に至らないケース、早期離職のリスクなども考慮すると、トータルで見るとマイナスになる可能性もあります。
また、助成金制度の活用スキームは社労士や補助金コンサルタントから提案されることが多いみたいですが、求人市場での応募動向や採用難易度まで踏まえた設計になっていないケースがほとんどです。
助成金ありきで雇用形態を設計するのではなく、最初から正社員採用が可能であれば、正社員募集として打ち出すほうが結果的に採用成功率は高くなります。
キャリアアップ助成金を悪用した求人の問題
キャリアアップ助成金を前提とした採用設計が行き過ぎると、求職者にとって不利な求人が生まれるケースもあります。
特に問題となるのが、求人サイト上では正社員募集として掲載しながら、実際には入社時に契約社員やアルバイトとして雇用するケースです。これは一般的に「釣り求人(ダミー求人)」と呼ばれ、以前から指摘されている問題です。
こうした求人は、求職者の期待を裏切るだけでなく、企業に対する不信感を生み、採用市場全体の信頼を損なう要因にもなります。実際に採用現場では、こうした手法によって応募者とのミスマッチが増え、早期離職や採用難易度の上昇につながるケースも少なくありません。
求人情報に違和感を感じた場合は、雇用形態や条件を事前にしっかり確認することが重要です。また、悪質なケースについては求人媒体への報告も検討しましょう。
制度はあくまで企業と求職者双方にメリットをもたらすためのものです。本来の目的から逸脱した運用は、結果的に採用活動そのものを難しくするリスクがある点にも注意が必要です。
まとめ
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者を正社員へ転換することを促進する制度であり、本来は企業と労働者の双方にメリットのある政策です。企業にとっては人件費負担を軽減しながら人材の定着を促すことができ、労働者にとっても安定した雇用環境を得るきっかけになります。
一方で、助成金を受給することだけを目的に採用設計を行ってしまうと、求人の魅力が弱くなり応募が集まりにくくなるなど、採用活動そのものに悪影響が出る可能性もあります。
助成金はあくまで採用や人材育成を後押しする手段であり、目的ではありません。制度を活用する際は、助成金額だけに目を向けるのではなく、採用市場の状況や求職者の心理も踏まえたうえで総合的に判断することが重要です。

