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外国人留学生を雇うときのメリット・デメリットと在留資格の注意点
中国やベトナムといった外国人留学生をアルバイト採用する際には、日本人と同様に安心して働ける環境を整えることが重要です。
本記事では、給与や労働条件の注意点をはじめ、就業できない職種や確認すべき在留資格・証明書など、アルバイト採用から正社員採用まで企業が押さえておくべきポイントを現役求人広告代理店がわかりやすく解説します。
目次
外国人留学生アルバイトを採用するメリット
深刻な人手不足が続くなか、日本で学びながら働く外国人留学生は、企業にとって大きな戦力となります。
外国人留学生は学費や生活費を賄うために働くケースが多く、労働意欲が高く安定した勤務が見込める人材です。近年は中国・韓国だけでなく、ベトナムやフィリピン出身の留学生も増えており、採用対象は年々多様化しています。
一部では違法就労が社会問題化していますが、その背景には「出稼ぎ」という本音があり、だからこそ真面目に働きたいという強い姿勢を持つ人材が多いのも特徴です。
特に都市部の飲食店や小売業では、外国人観光客への対応が増えており、日本語以外の語学力を持つ留学生は接客面でも大きな戦力となります。
不人気な職種でも応募が集まりやすい
留学生の多くは「日本で働きたい」という強い意欲を持っています。
一般的に応募が少ない深夜シフトや清掃などの職種でも、外国人留学生からの応募が見込めるため、人手不足解消に直結します。
留学生ネットワークによる紹介が期待できる
採用した留学生の友人・知人から新たな応募が集まるケースも多くあります。
ベトナムからの留学生コミュニティは横のつながりが強いため、安定した人材確保につながる可能性があります。

外国人留学生アルバイトを採用する際の注意点
日本人と同じ労働条件を守りつつ、就労制限や法的手続きを正しく理解することが重要です。
週28時間以内の就労制限
留学生は資格外活動許可を得ている場合でも、アルバイトは週28時間以内(長期休暇中は週40時間以内)に制限されています。違反すれば学生本人だけでなく、雇用主も不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)に問われるため厳格な管理が必要です。
風俗関連業務は禁止
バーやキャバレー、パチンコ店などの風俗営業や関連業務でのアルバイトは、仕事内容にかかわらず禁止されています。求人を出す際は業種・職務内容を明確に記載し、誤って採用しないよう注意しましょう。
パスポート・在留カードの確認
パスポートや在留カードは必ず本人が管理するもので、雇用企業(事業者)が預かることは違法です。採用時には在留カードのコピーを確認し、在留期限や資格外活動許可の有無をチェックすることが必要です。
関連記事:映画『天気の子』から学ぶ年齢詐称を防ぐ身分証明の話
ハローワークへの届出義務
外国人留学生を雇用・離職させる際は、必ずハローワーク(公共職業安定所)に届出が必要です。届出を怠ると30万円以下の罰金が科されるため、採用手続きと合わせて確実に対応しましょう。
ハローワークへの届出作業を理由に外国人採用を見送る企業がいるほど、とても面倒です(守っていない企業もいますが)。緩和してほしいところですが、採用するために頑張りましょう。
ダブルワークの確認
ダブルワークをしていないか注意してください。留学生は留学ビザですから原則週28時間以内と法律で決まっています。破った場合は雇用主側にも罰則があり、不法就労助長罪が適用されてしまいます。
不法就労助長罪は3年以下の懲役、300万円以下の罰金、またはその両方の対象となります。彼らもバレた場合は強制送還の対象になるのをわかっているので隠す人がいます。「給与は銀行振込ではなく現金でください」と言われると危険です。
外国人労働者を採用するための求人広告のコツ
外国人留学生や外国人労働者をアルバイトとして採用する際は、求人広告の書き方ひとつで応募数や人材の質が大きく変わります。
特に日本語能力や国籍の記載、表現方法には注意が必要です。以下では、求人票を作成する際に押さえておきたい具体的なコツを解説します。
日本語能力を記載
必須スキルとして日本語能力のレベルを明確に記載しましょう。
居酒屋・ファーストフード・ファミリーレストランなど接客・ホールスタッフの職種ならN3程度で問題ありません。逆にN1~N2のレベルを求めると上位の学生層になってしまい、応募ハードルが上がってしまいます。
例えば、居酒屋・ファーストフード・ファミリーレストランなど接客やホールスタッフの職種であれば、日本語能力試験のN3程度で十分対応できます。逆にN1~N2を必須条件にしてしまうと、上位層の学生しか応募できず、応募数が減ります。
日本語能力試験はN1〜N5まであり、数字が小さいほど日本語レベルが高いのが特徴です。ただし、N1合格者でも実務で流暢に会話できるとは限りません。一方で、N3でも接客経験が豊富な学生はスムーズな日本語を話すこともあります。
求人票では「日本語で日常会話ができる」「接客経験がある方歓迎」など、具体的に記載することが効果的です。
スタッフの国籍を記載する
すでに外国籍スタッフを採用している場合は、国籍や人数を紹介として記載するのがおすすめです。
「中国・韓国・ベトナム・フィリピン・ネパール出身のスタッフが在籍しています」といった情報は、応募者に安心感を与えます。特に同じ国出身の先輩がいると、働くイメージが湧きやすく、応募につながりやすくなります。
残業アピールが人気の秘訣
外国人留学生にとっては「残業あり」は魅力的な条件です。
日本人の場合は残業を避けたい人が多いですが、留学生は「残業代で稼ぎたい」と考える傾向があります。なぜならフィリピンやベトナム外国人留学生の目的は出稼ぎだからです。
給与欄に「平均残業時間」や「シフト調整の柔軟性」を具体的に記載すると、応募意欲を高められます。また、外国語対応している雇用契約書、マニュアル完備といった面も立派な待遇・福利厚生に書ける材料です。
ただし、特定の国の外国人スタッフ(主にベトナム)が集中してしまい、日本語をしっかり理解している人間がいなくなってしまう可能性があるので、接客業では注意が必要です。
和製英語に注意
求人広告では、辞書に載らない和製英語や流行語を避け、外国人にも理解できる表現を使いましょう。
特に注意してほしいのが和製英語です。
辞書にも載っていない和製英語は通じません。また日本独特の言い方や難しい感じは使わないようにしましょう。求人広告では一般的な言葉でも外国人にはわかりづらいです。流行語・擬声語も解りづらいので避けたほうが無難です。
- モクモクと働ける職場 ⇒ 喋らずに黙って働ける職場
- 社内はクールビズ推奨 ⇒ 社内は衣服の軽装化を推奨
- コツコツと取り組める人歓迎 ⇒ 真面目に地道に取り組める人歓迎
外国人留学生採用における就労ビザと仕事内容の注意点
外国人留学生を新卒で採用する場合には、必ず「在留資格変更申請」が必要です。外国人採用における就労ビザの基礎知識と、雇用契約書に記載すべき業務内容の重要性について解説します。
外国人留学生は在留資格変更が必要
留学生は「留学」という在留資格で滞在しており、日本企業に就職する際には、通称「就労ビザ」と呼ばれる在留資格への変更が必要です。
この申請は内定決定から入社までの間に行う必要があり、審査には業務内容との関連性が大きく影響します。余裕を持って入社の2〜3か月前から準備を始めることが推奨されます。
申請時期が卒業シーズンと重なると審査が長引くこともあり、書類不備による遅延も考えられるため、雇用契約書には「入社日変更の可能性」を記載しておくと安心です。
在留資格変更が認められないケースもある
就労ビザの許可が下りるかどうかは、学歴・専攻と業務内容の関連性が審査基準となります。
たとえば会計学専攻であれば会計職、工学専攻ならエンジニア職などが基本ですが、企業の事業内容や担当業務によっては幅広く認められるケースもあります。逆に、専攻と業務が関連していないと判断されれば、どんなに企業が採用を望んでいても許可は下りません。
入国管理局は申請を一件ずつ確認し、学生のスキルが業務に活かせるかを厳格に判断します。そのため企業は「学生の専攻と仕事内容の関連性」を意識した採用活動を行う必要があります。
(参考:在留資格一覧|法務省資料)
外国人留学生の業務内容を明確にする重要性
在留資格変更申請では、雇用契約書の提出が必要です。これは単なる申請書類ではなく、留学生が納得して働くための業務内容の合意文書でもあります。
外国人採用でよくあるトラブルが、業務内容の認識の違いです。文化や価値観の違いから「契約書に書かれていない作業はしない」と不満を抱くケースが多く、退職につながることもあります。
例えば、
- 朝礼への参加
- オフィスの清掃
- プログラマーへの通訳同行依頼
- 翻訳担当への問い合わせ対応
これらは日本企業では当然とされるケースが多いですが、契約書に明記されていないと「想定外の業務」として拒否される可能性があります。
雇用契約書に記載すべき内容
トラブルを防ぐためには、雇用契約書に業務内容をできるだけ詳細に記載することが大切です。また、記載項目外の業務が発生する可能性についても、あらかじめ説明しておきましょう。
- 業務内容に付随する軽作業が発生する場合がある
- 発生頻度は月〇回程度を想定
といった形で明文化しておけば、企業にとっても従業員にとっても安心材料となります。
外国人留学生を正社員として採用する際には、在留資格変更申請と仕事内容の明確化が最重要ポイントです。

まとめ
経営者や人事が理解しておくべきなのは、外国人留学生の働き方の基準は「人柄」ではなく「文化や価値観」によって形成されているという点です。彼らにとっては「業務以外をしない」のが当たり前であり、日本企業特有の「暗黙の了解」に従うことを当然とする価値観とは大きく異なります。
そのため、外国人留学生を採用する際には、単に人手不足を補う手段としてではなく、彼らのバックグラウンドを理解し、明確なルールや説明責任を果たすことが重要です。自社が「初めての社会経験の場」となる可能性を意識し、組織文化をグローバル人材に対応できる形へ進化させる視点を持つことが、外国人留学生採用を成功させる第一歩と言えるでしょう。