BLOG
不二越「富山は採用しない」差別発言から考える地方企業の採用事情
雑記・日記・備忘録
富山市に本社を置く機械メーカー・不二越の本間博夫会長が「富山から採用しない」と発言し、大きな波紋を呼びました。地元軽視とも受け止められ炎上しましたが、その裏には地方企業ならではの採用課題や人材戦略の変化があります。
本記事では、発言の背景にある真意や地方就職と東京就職の違い、さらに企業が直面する人材確保の現実について、採用の専門家視点でわかりやすく解説します。
目次
不二越「富山から採用しない」発言が炎上
「富山で生まれて幼稚園、小学校、中学校、高校、不二越。これは駄目です」「富山で生まれて地方の大学へ行った人でも極力採りません。なぜか。閉鎖された考え方が非常に強いです」
2017年7月の決算発表会で本間博夫会長の「富山からは採用しない」発言が問題視され、ネット上で炎上しました。富山県で過ごした人が閉鎖的だと感じるまでの経緯が気になります。
出身地だけで採用の判断基準にするのは反対ですが、インパクトのある言葉だけが切り取られてしまったように感じます。また、私も富山県に限らず地方の気質として「閉鎖的」であるという部分に関しては同意見です。
特に日本四大都市(東京・名古屋・大阪・福岡)から離れている地域ほど閉鎖的に感じます。採用屋の観点から地方での採用事情と合わせて閉鎖的だと思う理由をまとめました。
株式会社不二越とは
- 会社名:株式会社不二越
- 創立:1928年12月21日
- 資本金:160億円
- 連結売上高:2114億円(海外売上高985億円)
- 連結子会社:53社(国内23社、海外30社)
- 連結従業員:54社6775人(単独2945人)
- 事業内容:自動車製造用ロボット、ベアリング、油圧機器、工具、特殊鋼 など
- 商標:NACHI
- 公式サイト:https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/
富山市に本社を置く数少ない東証上場企業で、グローバル市場でも存在感を発揮しているメーカーです。
高シェアの独自製品が多いのが特徴。戦前は軍需会社法による軍需会社に指定されていたそうですから、戦前から半世紀以上も高い技術力を維持していることがわかります。
富山県本社の上場企業は約20社のうちの1社で、今回初めて知った名前ですが素晴らしい企業でした。
地方は本当に閉鎖的?発言が示す課題
会長が「閉鎖的」と表現した点については、富山県に限らず多くの地方で共通する課題とも言えます。
地方では「地元出身者が大多数を占める組織」になりやすく、新しい価値観が入りにくい傾向があります。結果として、採用や経営においても保守的・内向きになりがちです。
逆に「富山は開放的な県民性」と言われても違和感を持つ人が多いでしょう。つまり会長の発言は、地方企業の採用や人材多様性を考える上で現実を突いたものとも解釈できます。
不二越『富山から採用しない』発言の真意
2018年、不二越は東京本社への一本化を進めました。これまで創業の地である富山本社を中心に採用活動を行ってきましたが、海外ビジネスの拡大においては非効率な側面もあったと考えられます。
本間会長が本当に伝えたかったのは、
- 富山県出身者に偏った採用構造を見直したい
- 多様なバックグラウンドを持つ人材を採用し、組織の競争力を高めたい
という点ではないでしょうか。
単なる「地元否定」ではなく、グローバル企業としての 多様性確保の方針 と捉えるのが妥当です。
地方企業の採用事情と課題|富山県に優秀な学生は集まらない
富山に限らず、地方企業の採用には共通の課題があります。
- 求人数の少なさ
大手就活サイトや転職サイトを見ても、「富山 就職 求人」の件数は東京・大阪と比べると圧倒的に少なく、選択肢の幅が狭いのが実情です。
- 優秀な学生の流出
富山県出身の学生であっても、大学進学を機に東京や首都圏に移り、そのまま現地で就職するケースが大半です。首都圏には大手企業や成長産業が集中しており、キャリア形成・給与水準の面でも地方より有利だからです。
- 閉鎖的な風土
「地元大学出身者ばかり」「同じ地域出身の社員が多数」という環境は、新しい視点が入りにくく、組織が保守的になりやすいというデメリットもあります。
地方就職 vs 東京就職の比較
- 給与・待遇:東京の方が水準が高い
- キャリアの広がり:業種・職種の選択肢が圧倒的に豊富
- 転職のしやすさ:東京は求人が多く再就職に有利、地方は限られる
- 生活の利便性:地方は暮らしやすさがあるが、ビジネス機会は少ない
この格差が、地方企業が優秀人材を採用・定着させにくい最大の理由です。
まとめ
不二越会長の「富山から採用しない」発言は、表面的には地元を否定するように聞こえますが、真意は組織の多様性と競争力を高めるための方針と言えます。
地方企業がグローバルに成長していくには、閉鎖的な採用から脱却し、首都圏や海外から幅広い人材を受け入れる姿勢が不可欠です。今後も不二越をはじめとする地方発のものづくり企業が、採用戦略を柔軟に進化させていけるのか注目されます。