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不二越「富山は採用しない」差別発言から考える地方企業の採用事情
雑記・日記・備忘録富山市の機械メーカー、不二越の本間博夫会長の「富山から採用しない」発言が波紋を呼びました。本間博夫会長の発言は炎上しましたが、真意を考えながら地方企業の採用事情について考えてみました。
株式会社不二越とは
株式会社不二越
創立:1928年12月21日
資本金:160億円
連結売上高:2114億円(海外売上高985億円)
連結子会社:53社(国内23社、海外30社)
連結従業員:54社6775人(単独2945人)
http://www.nachi-fujikoshi.co.jp/
株式会社不二越とは富山県富山市に本社を置く東証1部上場企業です。自動車製造用ロボットを中心とした機械メーカーで、工具、ベアリング、産業用ロボットを中心に、油圧機器、工作機械、特殊鋼も得意。高シェアの独自製品が多いのが特徴。商標はNACHI(那智)。
戦前は軍需会社法による軍需会社に指定されていたそうですから、戦前から半世紀以上も高い技術力を維持していることがわかります。
富山県本社の上場企業は約20社のうちの1社で、今回初めて知った名前ですが素晴らしい企業でした。
富山からは採用しない発言
「富山で生まれて幼稚園、小学校、中学校、高校、不二越。これは駄目です」「富山で生まれて地方の大学へ行った人でも極力採りません。なぜか。閉鎖された考え方が非常に強いです」
2017年7月5日におこなわれた決算発表会での本間博夫会長の発言が問題視され、ネット上で炎上しました。富山県で過ごした人が閉鎖的だと感じるまでの経緯が気になります。
出身地だけで採用の判断基準にするのは反対ですが、インパクトのある言葉だけが切り取られてしまったように感じます。また、私も富山県に限らず地方の気質として「閉鎖的」であるという部分に関しては同意見です。
特に日本四大都市(東京・名古屋・大阪・福岡)から離れている地域ほど閉鎖的に感じます。採用屋の観点から地方での採用事情と合わせて閉鎖的だと思う理由をまとめました。
地方は閉鎖的なのは間違いない
まず「富山県は閉鎖された考え方が強い」という発言に関しては、ある程度納得できる部分ではないでしょうか。
閉鎖的の対義語は開放的だと思いますが「富山県は開放的な県民性である」と言われるほうが「どこが?」と疑問に思う方が多いように思えます。
これは富山県に限定した話ではなく、地方ならどこでも閉鎖的・保守的・排他的な側面が強いと思います。むしろ閉鎖的でない地域ってあるのでしょうか?
富山からは採用しない発言の真意
発言の背景には東京本社と富山本社だったものを、2018年に東京本社に一本化することを考慮しなければいけません。これまで創業の地であり本社を構えていた富山県でしたが、海外ビジネスを展開していくうえでは非効率な部分も多かったと推測できます。
本間博夫会長は「富山本社だから自然に富山県出身者が大半を占めていたが、今後は多様性の意味でも様々なバックグラウンドを持った社員を採用する。むしろ富山県比率が多すぎるから、ちょっと下げたい」ということを言いたかったのではないでしょうか。
富山県に優秀な学生は集まらない
採用という観点では、地元の大学でもないかぎりは富山県の会社にわざわざ就職するような学生は少ないと思います。富山県出身の優秀な若者でも、東京で就職活動する学生がほとんどでしょう。
東京や神奈川など首都圏のほうが、圧倒的に求人数が多く、学生にとって選択肢が多いからです。早慶やマーチに入学すると大手都市銀行、大手インフラ会社、総合商社や広告代理店へ入社できる可能性があります。
また上位校となると就職人気ランキング上位企業の内定者や採用担当者が学内セミナーで熱く語る姿を日常的に見ることができ、自然と感化される環境があります。
都心と地方では給与面もかなり差が出ており、就活サイトで給与面を比較して「就職は東京にしよう」と考えるのは当然ですよね。
せっかく有名大学を卒業するのだから待遇のいい企業に就職したいし、田舎の地元は何かと不便。将来的に転職したくなっても地方だと圧倒的に不利です。よほど地元愛が強くないと富山県に戻らないと思います。
求人数の圧倒的格差
そもそも大手就活サイトや転職サイトでも富山県の求人数はかなり少なく、消去法で「都心で就職するしかない」とも言えます。
都心は数百件の求人数があるのに、田舎だと掲載数が市単位で5件未満の地域なんてザラ。これでは地元に帰ろうと思っても帰れないのが実情ではないでしょうか。
まとめ
富山県を含めて地方は閉鎖的であると思いますし、地方に留まっているとグローバル展開していく中での機会損失も大きいと思います。また優秀なビジネスパーソンを集める意味でも東京に軸を移すのは正解です。
経営も採用も時代の変化に柔軟に対応しなければいけません。現状維持は衰退の始まり。不二越さんには、日本のものづくり企業として、これからも成長していってほしいと思います。