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書類選考でのマッチングと人材要件の柔軟性の話
都内の人材紹介会社(転職エージェント)さんの会社に遊びに行った際に人材要件と書類選考のマッチングの話になりました。
人材紹介会社に依頼する会社は最低ラインの必須スキル能力を伝えることで、一次選考の役割を期待している採用担当者も多いと思いますが、それが逆に優秀な人材を逃がしていることになっている場合もあります。参考事例として無形サービスの法人営業の募集を依頼しているA社を仮定します。
募集職種:法人営業
事業内容:不動産ウェブサイト運営
従業員数:100名
仕事内容:自社運営サイトの広告出稿を提案する新規開拓
カテゴリ:第二新卒
求める年齢層:24歳~28歳(社会人2~5年目)
必要な能力・経験:インターネット広告業界、不動産業界での営業経験
【スクリーニング項目】
①年齢・学歴
②営業経験(法人営業/個人営業)
③営業経験(有形/無形サービス)
候補者の人柄・性格・仕事観は面接で見極めるのが通常なので、数字として明確なこの三点が人材紹介会社のスクリーニング項目になりやすいです。
組織の平均年齢から①と営業経験の有無のみ希望する企業もあれば、有名企業になると応募者も増えるので②や③まで求める企業もいると思います。さらにトップクラスになると書類選考の段階で経験年数と営業実績も必要になってきます。
人物重視の採用の場合でも面接の効率化とミスマッチを減らすために自社サービスとの親和性の高い無形サービスの法人営業経験者が欲しいと考えるのは普通ですよね。でも書類選考の段階で経験の有無を重視しすぎると優秀な人材のとりこぼしが発生するという話になりました。
たとえばこんな人物
1.業務委託でフルコミッション(完全歩合制)の営業経験1年。
(大卒/28歳/正社員経験3年未満/転職3回)
2.アルバイトだけど営業代行会社でテレアポ経験2年半。
(高卒/24歳/正社員経験なし)
商材がしっかりしているメーカー営業よりも、こうした戦士タイプでストレス耐性レベル99の人材のほうが活躍する可能性が高いと思っていますが、職務経歴が求める条件と違いすぎるためエージェントの立場としても紹介しづらいだろうし、紹介しても書類選考の段階で不採用になってしまいやすいと思います。
人材紹介会社の方と話をしたのは違う分野だけど営業スキルがあり、本人のやる気と現場での教育体制が揃っていれば②や③のような営業の相性度は必要ないよねという意見で一致しました。
よくある人材要件定義の失敗例として、採用担当者は法人営業経験を求めつつも、現場の人間に聞くと実はテレアポ能力こそが最も必要とされ(商品知識やクロージングは上司が同行するから無問題)、成績上位者はテレアポ能力が高い人間が並んでいる場合があります。
どんなサービスでも訪問件数って絶対必要ですもんね。決裁者とのアポが獲得できれば、あとはなんとかなるパターンです(^_^;)
こうした問題ではペルソナ設計・要件フレームの要素分解が甘い部分以外に、採用担当者が現場の営業責任者から言われた条件をそのまま人材紹介会社にスライドしている可能性もあります。
難しいのはこうした組織内部事情かつ個人の考え方に左右される問題は外部業者である求人広告代理店や人材紹介会社には改善しづらい点です。なぜなら窓口は採用担当者なので営業責任者とお話しする機会がないからです。
仮に採用担当者が決めている場合でも「こうしたほうがいい」と伝えても相手にとって常識とされる考え方を変えてもらうのはなかなか難しい。過去に似たような人を採用した結果、1ヶ月未満で退職してしまった失敗談があると決断できない気持ちもわかります。
20代のうちから転職回数が多いジョブホッパー型の人や、正社員経験がない人だと書類選考で落ちてしまいやすいのは致し方ありません。必ずしも企業側だけの問題ではなく、候補者側も過去の企業選びや仕事探しが下手だったり、自身の将来設計が甘かったりします。実際に高卒の離職率は大卒の離職率よりも高いです。
ただし日本国内が空前の売り手市場。採用担当者が受け身姿勢のままだと紹介数は好転しないでしょう。条件を緩和することで紹介数が増えるメリットもあるので、書類選考でベストマッチを求めすぎるのはよくないのかもしれませんね。
まとめ
一言で言ってしまうと「採用ハードルを調整しましょう」で説明がつくかもしれませんが、「人柄もいいし能力も高いが、経歴が汚いので紹介先がない」ケースを聞き、勿体ないなと思った事例をご紹介しました。
転職市場では決して安くはない紹介手数料が発生するため自社と同じ業種、類似商品を扱っている候補者を求めがちですが、「本当にこの条件で合っているの?そもそもいるの?」と初心に戻る気持ちも重要です。
有名ベンチャー企業であれば幅広い応募者がいると思いますが、もしも人材紹介会社からの紹介数が少ない場合は埋もれた人材発掘のために人物像の設計・要件定義を作り直したほうがいいのかもしれません。