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ファミリーマート主婦採用10万人計画は成功するのか検証してみた
コンビニ大手のファミリーマートが発表した「2年間で主婦層10万人採用」という大胆な目標。学生やフリーターが中心だったコンビニ業界で、主婦層を主戦力に据える狙いは成功するのでしょうか。
本記事では、求人広告・採用の現場経験を踏まえ、採用必要人数・応募数・費用などを数値シミュレーションし、現実的な達成可能性を検証します。
ファミマが掲げる主婦層10万人採用計画
ファミリーマートはコンビニ店舗に主婦の積極採用を促す。約1万8千店の合計で今後2年に10万人の主婦を採用する目標を策定(中略)ファミマの全国の店舗では、現在約20万人が働いている。そのうち主婦は4分の1の約5万人で、これを15万人に増やすことを目指す。達成すれば全体の従業員数も30万人に増え、主婦が半分を占めることになる。
出典:主婦をコンビニ主戦力に。ファミマ、10万人採用目指す -日経新聞
深刻な人手不足の中、コンビニ業界も新たな労働力確保が急務。ファミリーマートの計画は、数字だけ見ればインパクトがありますが、実際に達成できるのでしょうか。
必要採用数の試算
2年間(24カ月)で10万人採用ということは、毎月約4,166人の主婦を採用する必要があります。
ただし、採用しても一定割合は離職します。今回は比較的楽観的に以下を前提としました。
- 定着率30%(10人採用して3人残る)
- 毎月1割が離職(8カ月目以降は離職なし)
- 19カ月目以降は定着率が40%に改善
この条件を加味すると、10万人を定着させるには累計25万8,000人(毎月約1万750人)を採用する必要があります。
必要応募数の試算
応募からの採用率は業種や条件によって異なりますが、今回は平均的な30%を想定。
この場合、累計25.8万人採用には約86万件(毎月約3万5,833件)の応募が必要です。
求人サイトのみで集める場合
主婦層は「専業主婦」と「パート主婦」に大別されます。
大手求人サイトのデータや経験則から、専業主婦層からの応募は月5,000〜7,500件程度、パート主婦層を含めても1サイトで月1万件程度が限界と考えられます。
つまり、タウンワーク・フロムエー・マイナビバイト・バイトルなど大手4媒体すべての主婦層応募がファミリーマート1社に集中すれば、理論上は必要応募数を確保できますが、現実的には困難です。
ちなみに採用単価を1人1万円と仮定しても、総額25.8億円が必要になります。
コンビニ業界全体の採用動向
コンビニ業界は外国人アルバイトの採用にも積極的で、技能実習制度の対象職種にコンビニ運営を加えるよう要望しています。
大手3社で外国人労働者は全従業員の約6%(4.4万人)を占めており、留学生採用は今後も増加する見込みです。
また、セルフレジの普及が進む一方で、有人対応を求める顧客は依然として多く、完全無人化は当面難しい状況です。
総括:成功のカギは多様な人材活用
試算の結果、現行の採用市場環境で主婦層10万人を2年以内に定着させるのは極めて困難です。特に専業主婦層は就業しない理由が多様で、単なる条件改善では動きにくい層でもあります。
地域によっては採用環境がさらに厳しく、東京23区内でも採用を半ば諦めている店舗も存在します。実効性のある採用戦略には、特定層への依存ではなく、学生・フリーター・外国人など多様な層の組み合わせが不可欠です。
みずほ総合研究所
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/pl140516.pdf