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ライフネット生命岩瀬社長のインターン名刺入力事件から考える相互理解
2015年11月の話ですが、ライフネット生命保険の岩瀬大輔社長がインターンシップの大学生に名刺入力をやらせたところ、2週間で辞めてしまったエピソードを明かし、それに対して苦言を呈したことで賛否両論が起きたことがありました。
大学生の就職活動の一環として定着してきたインターンシップをめぐり、ライフネット生命保険の岩瀬大輔社長が、受け入れた学生に名刺のExcel入力を任せたら2週間ほどで辞めてしまったというエピソードを明かした。
引用:インターンシップで「名刺の入力」させるのはどうなのか。ライフネット生命・岩瀬社長の発言巡り賛否両論
インターンシップを募集していないのに、自分からインターンシップを申し込んできた学生。すごい行動力ですね。一部ではブラック労働との評判もありますが、そもそも募集していない状況の中で、準備会社の頃の話なので、学生に頼める仕事が名刺入力ぐらいだったのかもしれません。
社長はやる気のある学生という労働力を確保したにもかかわらず、そのリソースを全く有効活用することができなかった。要するに結果が出せなかったという意味では完全に仕事の振り方を間違えた岩瀬社長のミスだと言わざるを得ない。それにもかかわらず、岩瀬社長はみじんも自分に責任があったとは考えずに学生が悪いと決めつけている。
引用:【炎上】ライフネット生命の岩瀬大輔社長「インターンさせてほしいって言ってきた学生に名刺のExcel入力の仕事をあげたら2週間で辞めやがった。単純作業でも楽しめよ」
仕事論として熱意のあるインターン生に名刺入力をさせるのは良いのか悪いのかが議論になっていますが、求人広告屋としては「学生は何がしたいのか」「岩瀬社長は何をさせるのか」きちんと仕事内容を説明したのかが気になりました。
辞めてしまった学生はマーケティング関連の仕事がしたかったそうですが、もしも辞める時にはじめて知った(聞いた)のであればヒアリング不足。何がしたいの?なんでうちで働きたいの?といった定番の質問をしていないように思えます。
その際、単に切って捨てるだけか、それとも、意義を丁寧に説明してあげるのか。それで、内定辞退・早期離職などはかなり変わるはずです。もちろん、一から十まで全部、意義を説明しないと仕事ができないなら、それはそれで問題です。
引用:「名刺入力で辞めた学生」批判への違和感「ライフネット生命・岩瀬社長騒動」再論
石渡嶺司さんの意見に共感しましたが、結局のところミスマッチの原因は説明不足だと思います。
岩瀬社長が「名刺入力を2週間やってもらう」と先に言っておけば学生は「やりたいことと違うので辞退します」と(ワガママですが…)言え、学生が「マーケティング関連の仕事がしたい」と言っておけば岩瀬社長は「それはできない」と言えたと思います。
特に経営者でもある岩瀬社長が、社会人経験のない大学生に対して仕事の意義を最初に説明しておけば、お互い不幸にならずに済んだのではないかと感じます。準備段階と多忙な時期だったかもしれない点を考慮しても、学生はそもそも無知ですから岩瀬社長側の説明不足の非はあると思います。
会社組織において理由を説明せずに下の人間に仕事をふる人は多いですが、「自分で気づけ」というマネジメントスタイルは良い結果に繋がらないと思います。
イソップ寓話「3人のレンガ職人」を引用して、仕事の目的と目標について説明する人は多いですが、自分で気づくのは難しいし、本人の成長にとっても意味がわからないまま作業させるのは果たして良いことなのか疑問です。
正社員にしろ、アルバイトにしろ最初はやりがいを感じられず、つまらない仕事ばかりだと思います。よく最近の若者や新入社員は、ゆとり世代や我慢不足といった論調がありますが、一方で管理職の説明不足(能力不足)が若者の早期離職の遠因になっていると思う節もあります。
今回の名刺入力インターンが労働契約に基づいているのか、ボランティアであるのかはわかりませんが、もしも労働契約であれば雇用主が順守すべき労働基準法において労働条件の明示義務があります。
労働条件とは賃金や労働時間もありますが業務内容(仕事内容)も含まれています。説明されていたのに辞めてしまったのであれば学生側の忍耐力の問題がでてきますね。
「自分から申し込んだ以上は何でもやれよ」といった意見もありますが、相手は大学生ですから最初に「こういう仕事を頼むことになるけど大丈夫?」と確認してあげて、その後も放置しないでサポートする必要があると思います。
同じオフィス内でもこうした意思の疎通ができていないこともあるわけですが、下請け会社や別拠点とのコミュニケーションを徹底させるのはさらに難しいと言えます。
リモートワーク(在宅勤務)が今後ビジネスにおいて重要な役割を担っていくことからも、説明責任の重要性が高まっていくと思います。
お互いが良好な関係で仕事をしていくには、ただ仕事をおとすだけでなく、相手に仕事の意義や背景を理解してもらったほうがいいのは間違いありません。自分の仕事が忙しいとつい省略しがちですが、自戒を込めてまとめました。