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【炎上人事】株式会社ノースサンドを求人屋視点で考察
日常記録・雑感備忘コンサルティング事業を展開する株式会社ノースサンド(東京都中央区銀座/代表取締役:前田知紘)の人事担当者・大塚さんによるTwitter投稿が、SNS上で大きな議論を呼びました。
問題となったのは「給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくない」という趣旨の発言です。この投稿に対しては「言い方が不適切」「ブラック企業ではないか」といった批判が相次ぎ、企業の採用姿勢や人事担当者のSNS発言のあり方について議論が広がりました。
採用の現場では、給与や待遇をどう捉えるかは企業と求職者双方にとって重要なテーマです。本記事では今回の発言をきっかけに、求人広告や採用現場の視点から「給与・待遇へのこだわり」「面接での条件確認」「求人情報の伝え方」について整理してみたいと思います。
目次
株式会社ノースサンドの炎上ツイート
人事担当の大塚さんのツイッターの発言が炎上していました。
新卒採用担当を採用したいと思い、沢山の方にご応募いただいているのですが、給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくないのです。。。
私は、会社の顏となる人事だからこそ、待遇/給与で会社を選ぶ方と働きたいとは思わない。
— 人事の大塚さん@株式会社ノースサンドって知ってる? (@nshr_otsuka) January 31, 2022
新卒採用担当を採用したいと思い、沢山の方にご応募いただいているのですが、給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくないのです。。。私は、会社の顏となる人事だからこそ、待遇/給与で会社を選ぶ方と働きたいとは思わない。
投稿直後からさまざまな反応が寄せられ「言い方がまずい」「ヤバい会社だ」「ブラック企業すぎる」「謎マナーの強要」「やりがい搾取」「新手の炎上マーケティングか?」といった批判が見られました。
この話題はSNS上の議論にとどまらず、実名アカウントによる発言リスクや企業ブランディングの観点から、大手メディアでも取り上げられることになります。
採用に関する発言がここまで議論を呼んだ背景には、給与や待遇に対する考え方の違いだけでなく、企業と求職者の間にある認識のギャップも影響していると考えられます。
給与や待遇にこだわりのある人とは?
今回の投稿で特に注目されたのが「給与や待遇にこだわりのある人」という表現です。
そもそも、どのような状況でこの言葉が使われたのかは外部からは分かりません。エントリーの段階で給与や待遇について詳しく質問する応募者が多かったのか、面接で条件面を重視する姿勢が見られたのか、あるいは別の文脈があったのかは明確ではありません。
そのため「どのような基準で『給与や待遇にこだわりがある人』と判断されたのか」という点については、受け取り方に幅が生まれやすい部分でもあります。
また、求人内容を見ると年収360万円程度の条件が提示されているポジションもありました。こうした条件の場合、応募者が給与や待遇について詳しく確認したいと考えること自体は、必ずしも不自然なことではありません。
むしろ求職者にとっては、入社後のミスマッチを避けるためにも、条件面を事前に確認することは合理的な行動とも言えるでしょう。
給与ばかり気にする人は活躍できないと言われる理由
長年、求人広告の仕事をしていると、採用担当者から「給与や待遇ばかり気にする人は活躍しない」という話を耳にすることがあります。採用の現場で人材を見てきた経験から、そう感じている担当者も少なくないようです。今回の投稿を見たときにも、この言葉を思い出しました。
ただし、この言葉をそのまま受け取るのは少し極端かもしれません。仕事で成果を出している人ほど、自分のスキルや成果に見合った報酬を求めるのは自然なことでもあるからです。
おそらく採用担当者が言いたいのは「給与や待遇に関心を持つこと」そのものではなく、自分の義務や役割を果たす前から権利ばかりを主張する姿勢のことではないでしょうか。
企業と労働者は、いわば契約関係にあります。企業は適切な報酬や労働環境を提供する責任があり、働く側にも成果や役割を果たす責任があります。どちらか一方が権利だけを主張しても、健全な関係は成り立ちません。
報酬を重視する価値観自体は決して悪いものではありません。ただ、その価値観に合った働き方や職種を選ぶことも大切です。成果と報酬が強く連動するフルコミッションの生命保険会社の営業職やハウスメーカーの営業職などは、そのような価値観と相性が良いケースも多いでしょう。
面接中の給与や待遇に関する質問が多い人
面接の場では「給与や待遇についてあまり質問しないほうが良い」という謎マナーが存在しますが、本来であれば、条件面について事前にしっかり確認してくれる応募者はむしろ歓迎されるべきです。
理由はシンプルで、入社後の認識違いを防ぐことができるからです。給与体系や支払い条件、評価制度などについて曖昧なまま入社してしまうと、後になって「聞いていなかった」「そんな条件だとは思わなかった」とトラブルになることがあります。
実際に過去の業務委託案件では「もし例外的に〇〇のケースが発生した場合、支払いはどうなるのか」「具体的な支払いの流れはどうなるのか」といった細かい点まで確認された応募者がいました。
本人は「お金の話ばかりしてしまい申し訳ありません」と気にされていましたが、むしろこちらとしては事前に疑問点を整理してくれることに助けられたという印象です。
採用において一番避けたいのは、条件面の認識違いによるトラブルです。給与や待遇について事前にしっかり説明できていれば「その条件を理解したうえで入社を決めた」という共通認識を持つことができます。
その意味でも、応募者が条件面について丁寧に確認することは決して悪いことではなく、むしろ企業と求職者の双方にとってメリットのある行動だと言えるでしょう。
募集要項の説明不足からくる勘違い説
人事担当の募集ではないですが、年収500万円~1000万円と超幅の広い求人も募集されているノースサンド社。私は凄く気になりました。何故これほど給与の差があるのか。インセンティブによるものなのか。
インセンティブならどのような評価制度なのか、採用ホームページでは評価制度に関しては一切説明されていないので面接で質問するしかありません。これらを「こだわりのある人」と評価していたとしたら間違っていると感じました。
また、ノースサンド社の福利厚生欄には介護休暇・リフレッシュ休暇・生理休暇といったことが書かれています。しかし、制度名しか書かれていません(ハーモスの設計上そうなってしまんですが…)。
制度としてはあるけど活用されていない(活用できる雰囲気ではない)制度は沢山あります。某社では生理休暇の制度は存在しているものの「申請が恥ずかしくて利用できない」として利用している社員は皆無だとか…。
こうした福利厚生はただ書くのではなく、利用状況も合わせて書いたほうが親切ですが、ノースサンド社は出来ていません。これらを質問する候補者に対して「こいつ福利厚生に凄いこだわりがあるな~」とマイナス評価するのは間違っていると思います。
SNS炎上は採用に影響するのか
SNSでの炎上は採用活動に一定の影響を与える可能性があり、企業の採用ブランドや応募者層には一定の影響が出ると言えます。
今回のノースサンドの件でも、SNS上では「ブラック企業ではないか」「言い方が問題ではないか」といった批判的な意見が広がりました。一方で「企業の価値観を率直に示しただけではないか」という意見も少数ながらありました。
採用活動で重要なのは、企業と求職者の価値観がどれだけ一致しているかです。企業が求める人物像や価値観を明確に示すことで、それに共感する人材が集まりやすくなる一方、価値観が合わない人材は応募を控える可能性があります。
この意味では、今回のような発言が結果的に応募者層をある程度絞り込む効果を持つ可能性も考えられます。
また、今回募集されている人事ポジションの内容を見ると、社会人経験2〜3年程度の若手層を想定した採用で、営業職などからキャリアチェンジを希望する第二新卒が主なターゲットのようです。人材業界や求人広告業界の法人営業経験者であれば、採用業務にも比較的スムーズに適応できるケースも少なくありません。
さらに、人事職は「未経験可」で募集されることも多く、キャリアチェンジを希望する若手から一定の応募が集まりやすいポジションでもあります。そのため、SNS上で評判が議論になったとしても、直ちに応募が大きく減るとは限りません。
とはいえ、企業の採用ブランドという観点では、SNSでの発言が企業イメージに影響を与える可能性があることも事実です。特に人事担当者の発言は「企業の公式な姿勢」と受け取られることも多いため、発信内容や言葉の選び方には注意が必要になります。
近年は、正社員採用だけでなく副業人事や業務委託など、採用業務を外部人材と連携して進める企業も増えています。採用環境が変化する中で、企業は自社の採用方針や情報発信のあり方を見直しながら、最適な採用体制を構築していくことが求められるでしょう。
ハーモス導入で分かりにくくなった採用サイト
株式会社ノースサンドは、株式会社ビズリーチが提供する採用管理クラウドツール「ハーモス」を導入しています。しかし、採用サイトの構成を見ると、応募者にとってかなり分かりにくい設計になっている印象を受けました。
というのも、コーポレートサイト上に二つの採用ページが存在しているためです。一つはハーモスで生成された求人一覧ページ、もう一つは企業のビジョンや福利厚生などを説明する採用紹介ページです。
おそらく既存の採用ページに加えて、応募者管理ツールとしてハーモスを導入した結果、このような構造になったと考えられます。ただ、応募者の視点から見ると、どちらを見ればよいのか分かりにくく、情報が分散してしまう可能性があります。特にハーモス側の求人ページだけを見て応募する人も多く、企業のビジョンやカルチャーが十分に伝わらないケースも考えられるでしょう。
採用サイトは、企業の考え方や働き方を求職者に伝える重要な入り口でもあります。採用管理ツールを導入する際には、人事業務の効率化だけでなく、応募者がどのように情報にアクセスするのかという導線設計もあわせて考えることが重要です。
企業側にとって運用しやすい仕組みであることも大切ですが、それと同時に、求職者にとって分かりやすい採用サイトになっているかどうかも意識しておきたいポイントだと言えるでしょう。
採用サイトの情報が分かりにくい場合、応募者は面接で条件面について詳しく確認するしかありません。その結果、企業側からは「給与や待遇ばかり気にする人」という印象に見えてしまうケースもあります。今回の議論の背景には、採用サイトの情報設計の問題も少なからず影響している可能性があります。
まとめ
今回の一件は、SNSでの発言の是非だけでなく、企業と求職者の間にある価値観の違いを浮き彫りにした事例とも言えるでしょう。
それつまり、募集要項には記していないってことですよね?最悪ですよ。
面接に来ていきなり「募集要項には書いてないけど、実はこういう人を求めてる」とか言い出すつもりですか?最悪中の最悪は採用してから
「面接でも言わなかったけど、実は…」ってパターンだけど、まさか……やってませんよね?— あのこのきなこ (@anokogam) February 1, 2022
人事担当者の大塚葵さんを擁護すると、該当ポジションの求める人物像に「ノースサンドのビジョンに強く共感し、同じゴールを見据えビジョン実現に邁進できる方」と書いてあります。ビジョン採用のスタンスの割には、ビジョンの説明が少なくないかとも思いましたが…
理念やカルチャーを重視する採用を行うのであれば、その内容を求職者に十分伝えることも同じくらい重要です。企業のビジョンや評価制度、働き方などが具体的に説明されていない場合、応募者が給与や待遇について詳しく確認したくなるのも自然なことだからです。
採用の現場では、求人情報の説明不足や条件面の認識のズレが原因でトラブルになるケースも少なくありません。だからこそ企業はできるだけ透明性の高い情報を提示し、求職者は疑問点を遠慮なく確認することが大切です。
今回の議論は、採用活動における「情報の伝え方」や「企業と求職者のコミュニケーション」を改めて考えるきっかけになる出来事だったのではないでしょうか。求人広告に関わる立場としても、改めて意識しておきたいポイントだと感じました。

