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住友商事OB訪問セクハラ事件|ガイドラインと再発防止策の問題点
雑記・日記・備忘録OB訪問は本当に必要なのでしょうか。
住友商事やリクルートコミュニケーションズのOB訪問セクハラ事件をきっかけに「OB訪問は危険ではないのか」「企業は管理できているのか」と不安を抱く就活生も増えています。
本記事では、住友商事の再発防止ガイドラインを整理しながら、OB訪問の構造的リスクと本当に必要なのかという問いについて、人材業界の立場から考察します。
目次
住友商事OB訪問セクハラ事件の概要
まず事実関係を整理しておきます。
2019年3月、住友商事の社員がOB訪問に訪れた女子学生に対して性的暴行を行ったとして逮捕されました。この事件は「就活セクハラ」として大きく報道され、企業によるOB訪問管理体制の甘さが社会問題となりました。
2020年12月、リクルートコミュニケーションズ社員によるOB訪問アプリ「OBトーク」悪用事件も発覚し、OB訪問という仕組みそのものに疑問が投げかけられました。大手ゼネコン「大林組」も、2019年2月に強制わいせつ行為があった事件が発生しています。
OB訪問は本来、企業理解を深めるための機会です。しかし、企業管理外で行われるケースが多く、構造的にリスクを内包していることが明らかになったのです。
この一連の事件を受けて、住友商事は再発防止ガイドラインを策定しました。
住友商事のガイドライン
住友商事では2019年に住友商事の社員が、OB訪問にきた女子学生にたいして起こした性的暴行事件をうけ、再発防止として下記のガイドライン(一部抜粋)が定められました。
- ①入社3年未満の社員がOBOG訪問を受けることは禁止する。
- ②就職活動生との飲酒は、いかなる場面でも一切禁止とする。
- ③OBOG訪問対応時間は平日13:00~18:00に限定する。
- ④OBOG訪問の場所は原則、社内施設とする。
- ⑤OBOG訪問を受ける際には、メールで事前届出をおこなう。
- ⑥OBOG訪問の予定はスケジューラーに「公開」で登録する。
- ➆就職支援企業が運営するOB訪問マッチングアプリの利用は禁止。
上記のルールで7番が気になりました。
住友商事はビズリーチ・キャンパスと提携していましたが、ビズリーチを含めたすべてのマッチングアプリ経由でのOB訪問が禁止になりました。
しかしながら、これを読んだとき非常に中途半端なガイドラインだと思いました。なぜなら学生がアプリでOB訪問をする根本的な問題が解決できていないからです。
住友商事が抱える問題点
現状の問題点とは「より厳しくなったけど、どうしたらOB訪問できるの?」が解決されていない点です。
そもそもOB訪問マッチングアプリの存在意義とはなんでしょうか? それは「特定企業とのコネクションがない学生でもOB訪問を可能にする」ツールとして価値があります。
従業員となんらかの繋がりがある学生には何の影響もありませんが、なにもコネクションがない学生には大打撃。住友商事の本社にアポなしで突撃すればよろしいのでしょうか?
私が人事部なら「OB訪問申込フォーム」を作って完全に管理します。この申込フォーム以外のOB訪問は一切禁止にすることを採用ホームページなりで告知することで、より管理しやすいでしょうし、学生にも親切です。
今後似たような問題が起きても「ガイドラインがあるので会社側に責任はない」という言い訳づくりで作った、と思われても仕方のない対応だと思います。
こうした理由から私は住友商事が再発防止策として打ち出した実施要領は、表面だけを取り繕った対応と言わざるを得ません。
※もしかすると住友商事の問い合わせフォームから相談するぐらい強い志望動機をもっているのかどうかを試しているのかもしれません。
OB訪問アプリは危険?アプリが抱える構造的リスク
OB訪問マッチングアプリは、企業とのコネクションを持たない学生でも社員と接点を持てる点に価値があります。
ビズリーチ・キャンパスやOBトークなどは、従来の縁故型OB訪問を民主化したツールと言えるでしょう。しかし問題は、マッチング後のやり取りが企業管理外で行われやすい点にあります。
多くのケースでは、社員個人の裁量に委ねられ、企業の採用部門が把握できないまま対面での接触が発生します。そこに飲酒や私的接触が絡めば、トラブルが起きても事後対応になってしまうのです。
アプリを禁止することは一見強い対策に見えますが、構造的な管理の仕組みを整えない限り、根本的な解決にはなりません。問題は「アプリ」ではなく「企業の管理設計」にあります。
人事部採用チームの仕事も大変
一方で、人事側が「OB訪問まで人事部で管理できないよ」と言われても理解できます。住友商事クラスになると年間でどれくらいでしょうか。かなりの人数になると思いますし、それを人事部が一括管理するには莫大な時間がかかることも予想できます。
人事部の業務範囲が複雑化・高度化している中で「人事部でOB訪問まで管理できない」のが本音でしょう。住友商事も承認制ではなく、届出制にしていることからも、人事部の悩ましい事情が垣間見える気がします。
OB訪問は危険?就活生が知っておくべきリスクと対策
結論から言えば、OB訪問は必須ではありません。
現在は企業ホームページや採用ページ、YouTube、口コミサイトなど、企業理解を深めるための情報源が豊富にあります。OB訪問をしなければ内定が出ないという時代ではありません。
もしOB訪問を行う場合でも、必ず企業公認のルートを利用し、オンラインで実施することが安全面でも合理的です。
個人連絡先でのやり取りや夜間の対面訪問は避けるべきでしょう。企業理解のために自ら動く姿勢は重要ですが、自分の安全を犠牲にする必要はありません。
そもそもOB訪問は本当に必要なのか
就活セクハラ防止の観点から管理体制を強化すべきかという議論以前に、そもそもOB訪問という仕組み自体を見直す時期にきているのではないでしょうか。
私は、現在の就職活動環境においてOB訪問は必ずしも合理的な情報収集手段ではないと考えています。「OB訪問をしなければ現場の声が聞けない」という前提自体が、すでに時代遅れです。
本来、企業理解に必要な情報は企業側が体系的に開示するべきものであり、若手社員の善意や個人対応に依存する設計そのものに無理があります。実際、学生対応を若手社員に任せきりにしていた企業も少なくありませんでした。
現在は、採用ホームページで部署別・職種別の仕事内容を詳細に説明することも可能ですし、YouTubeやオンライン説明会で社員対談を公開する企業も増えています。さらに、転職会議やオープンワークといった口コミサイトを通じて、多角的な社員の声を確認することもできます。情報源はすでに十分に存在しています。
かつては企業側の情報発信が限られていたため、OB訪問に一定の役割がありました。しかし今は、情報を出さない企業こそが選ばれない時代です。母集団形成の観点からも、各社は積極的に情報発信とインターン受け入れを強化しています。
仮にOB訪問を行うとしても、対面にこだわる必要はありません。Zoomなどのオンラインツールを活用すれば十分です。新型コロナウイルスをきっかけにオンライン化が進みましたが、利便性と安全性を考えれば、今後もオンラインが主流になるでしょう。
OB訪問は「やらなければ不利になるもの」ではありません。むしろ、企業側の情報開示が進んだ今、その存在意義そのものが問い直される段階に入っているのです。
まとめ
OB訪問をめぐる就活セクハラ問題は、ここ15年以上にわたり繰り返し報道されてきました。表に出ているのは氷山の一角にすぎないという指摘もありますが、私も同様に感じています。
住友商事は厳格なガイドラインのもとOB訪問を継続する判断をしました。しかし、再発防止という観点から考えれば「OB訪問という仕組みそのものを見直す」という選択肢も本来は議論されるべきでしょう。
結論として、OB訪問は必須ではありません。企業理解は、企業側が責任を持って情報を開示することで担保されるべきです。採用ホームページやオンライン説明会、動画コンテンツなど、より安全で透明性の高い手段はすでに整っています。
就活生は無理にOB訪問をする必要はありません。そして企業側には、個人任せにしない採用設計を強く求めたいと思います。
なお、リクエストエージェントでは公式ルートでのご相談を受け付けています。OB訪問や採用に関するご質問があれば、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

