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【書評】ワタミの失敗から考えるブラック企業問題と情報発信の重要性
雑記・日記・備忘録『ワタミの失敗』という本を拝読させていただきました。個人的にワタミさんは大好きで、よく「わたみん家」を利用させていただいています。いちユーザーとして陰ながら応援している立場から『ワタミの失敗』を読んだ感想をまとめました。
新田龍とは
著者であるブラック企業アナリストの新田龍さんはメディアにも出られている機会も多く、人材業界ではかなり有名人です。
直接お会いしたことはないですが、様々な情報網を持っているようで、様々な企業の内部情報を把握しています。まさにブラック企業問題の専門家といえる人物です。
新田さんは「批判していた問題が解消されたのであれば、その事実まできちんと伝えることが、批判していた者としての責任だ」という考え方を示しており、かなり切り込んだトークをしますが、その背景にはしっかりとしたポリシーをもっている人でした。
ワタミの失敗 「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造
作者: 新田龍
出版社: KADOKAWA
発売日: 2016/09/08
ワタミは超優良企業
ワタミさんは今でこそ苦しい経営が続いていますが、数年前までは超優良企業と呼ばれていました。無借金経営で自社ビルがあるなんて完璧。
リーマンショック以降、外食事業が苦しい時代も、新規事業である介護事業が支えており、「特定の事業や特定の販売先に依存するな」とはよく経営本で見かけるフレーズですが、まさにそれを実践していた企業でした。
介護で利益をだすというのは並大抵の努力ではありません。一時期、「介護は儲からない」と言われており、事実、介護事業を展開しているツクイやメッセージといった大手企業が軒並み赤字決算だった時代に「ワタミの介護」だけ黒字!当時の介護業界の利益比較表を見ると笑えるくらい一人勝ちしていました。
渡邉美樹の手腕
買収という背景があったにせよ、異業種からの参入わずか数年で収益の柱にしたのは創業者の渡邉美樹さんの手腕によるところだと思います。
当時は異業種からの参入に拒否反応をしめす評価が多かったですが、外食で培ったワタミ流のサービスは介護業界でも評判が高かったようです。※ただし、介護の採用はおそらく死ぬほど大変だったと思います。
ある飲食店の社長を集めたトークセッションで「ワタミの社長(渡邉美樹)だけは真似するな。真似しようとしても出来ない」という言葉がいまだに印象的です。俗にいう成功者の世界でも別格の存在として扱われていました。
それぐらいエネルギーに溢れた立志伝中の人です。じゃないと東京都知事に立候補したり、国会議員にはなろうとはしませんね(笑)
ポジティブな情報発信の重要性
本書では「ブラック企業と呼ばせないことは、これからの時代の重要な経営課題」「必要なのは第三者目線」「ネガティブ報道はコントロールできない」「ポジティブなニュースを発信し続けること」と書かれていますが、本当にその通りだと思います。
本書では「悪評被害は採用だけでなく、顧客離れや業績悪化など経営にも影響を与える」としていますが特に採用(親の反対含め)へのダメージは計り知れません。
ただ残念ながら、この考え方はまだ浸透しているとは言い難いです。多くの企業がネガティブな情報を削除することばかり考えており、ポジティブな情報を発信する重要性を認識できていないと感じています。(言うほど簡単ではないことも要因)
弊社もメディア発信を得意としており、情報発信のサポートも依頼があれば承るつもりですが、引き合いは少ないです。弊社の説明力不足もありますが「情報発信して、どれくらい効果あるの?」「具体的な数字は?」と言われるケースが多く、なかなか数字で表せないため、理解していただくのは難しいと考えています…。
採用担当者が言いたいことは理解できるのですが、悪い評判が採用に与える影響について認識が甘いと感じるときがあります。
飲食店のクチコミ評判サイト「食べログ」があるように、採用業界においても転職クチコミサイト「転職会議」や「みんなの就職活動」がありますが、そういったポータルサイトにしか企業情報(クチコミ評判情報)が集まっていない状況が続くと、いつまでたっても中小企業の採用ハードルは高いままです。
今回の本で良い刺激にうけましたので、企業みずから情報発信する重要性の啓蒙活動を今後もおこないたいと思いました。
まとめ
総括としてすべての経営者、サラリーマンに読んでほしい本です。ワタミをブラック企業と批判したことがある人は一度この本を読んでみましょう!ワタミさんへの評価がかなり変化すると思います。
いまワタミさんはCI(コーポレートアイデンティティ)を刷新したり、様々な労働環境改善に取り組んでいます。ワタミさんは批判もされますが、多くのファンがいるのも事実。ワタミさんの今後の活躍に期待したいと思います。