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仮想通貨コインチェック社の求人募集から気づく高時給の定義
採用手法・採用知識
仮想通貨取引所「コインチェック」が話題を呼んだ求人をご存じでしょうか?時給1,600円、10名以上の大量募集という条件で、カスタマーサポート(電話対応)スタッフを派遣会社経由で募集していました。
「高待遇」とされていたこの求人。SNS上では、
- 「この修羅場で1,600円は安すぎでは?」
- 「その時給、ペリカ支払いですか?」
- 「仮想通貨の会社ならもっと稼げると思ってた…」
など、皮肉混じりの反応が多く見られました。
そこで本記事では、このコインチェックの求人を起点に、仮想通貨業界の「高時給」の定義を再考し、派遣市場における賃金感覚や求人表現とのギャップについて掘り下げます。
目次
コインチェックの時給1,600円バイト、実際はどうなのか?
求人の内容は以下の通りでした(※現在は募集終了)
https://haken.en-japan.com/w_30153758/
- ~人気の仮想通貨~総合窓口カスタマーセンターでの電話対応業務
- コインチェック社に関する問合せ対応
- 第三者による不正ログインや不正送金の問合せ対応
- 不正ログイン、不正送金等の犯罪被害に対する対応
- 口座開設、本人確認に関しての対応
- 送金方法についての対応
- 雇用形態:派遣(エン派遣掲載)
- 勤務地:新宿
- 時給1600円
- 10名以上の大量募集
引用:一貫して利根川式返金対応のコインチェック、怒涛の苦情対応に耐えうる人材を募集
仕事内容は、いわゆる火消し対応を含む高ストレス環境であることが予想されます。にもかかわらず、「1,600円=高待遇」とされたことに違和感を覚える人が続出しました。
時給1,600円は「高待遇」なのか?実際の年収に換算してみる
以下のように年収換算してみると、その疑問はより明確になります。
時給1600円×1日8時間×月20日×12カ月=年収307万円
派遣社員としては平均以上ですが、コールセンター業務でクレーム処理がメインとなると、「割に合うかどうか」は微妙なライン。特に、仮想通貨業界という激動の領域であればなおさらです。
「高時給」とされる理由は相対評価
なぜこの時給が「高待遇」と表現されたのか?
それは、求人掲載メディアであるエン派遣内の他求人と比較して“相対的に”高かったためと考えられます。
実際、エン派遣の事務系求人では1,200円〜1,400円程度が相場であるため、それより200円高いこの求人は「高時給」に分類されていたのでしょう。
しかしこの求人サイト内の基準と、労働者目線の業務内容への見合いとは、必ずしも一致しません。
高時給の基準は「仕事内容」と「心理的負荷」で変わる
時給の評価基準は、「地域・業種・ストレス度」によって変動します。
例えば、同じ1,400円でも以下のような印象の差があります。
- カフェのバイト:1,400円 → 高時給!
- コールセンター(苦情対応):1,400円 → うーん…?
- IT系サポート(英語使用):1,400円 → 安い…
つまり、時給の絶対額だけでなく「労働に対する対価」としての納得感が重要です。
派遣求人における「高時給」という言葉の使い方に注意
求人広告でよく見られる「高時給」「高待遇」といった表現は、あくまで掲載媒体内での相対的なラベルに過ぎません。
しかし、求職者はそれを「一般的に高い」と誤解してしまう可能性があります。
求人広告を制作・出稿する側(広告代理店や企業人事)は、「時給表示だけでなく、仕事内容とのバランス」も意識した設計が必要でしょう。
最低賃金の上昇で「高時給」の基準は変わる
東京都の最低賃金は2018年現在で985円台に達しています。
1,100円のバイトが「高時給」と言われた時代は終わりつつあり、今や1,200円以上でようやく「高時給」と感じられるようになってきました。
今後も賃金相場が上がれば、求人広告内のラベルや表現方法もアップデートが必要です。
求職者と企業の「時給感覚」のズレを埋めるために
本記事を通じてわかるのは「高時給」という表現が、求人メディア側・企業側・求職者側でそれぞれ異なる意味合いを持つという点です。
求人原稿の表現ひとつで、期待値と現実のギャップが生まれ、応募者の不満や離脱につながることもあります。求職者の納得感を高めるためには、相場感に即した設計と、仕事内容との対価バランスを丁寧に提示することが必要です。
まとめ|高時給は数字だけでなく納得感がカギ
- 時給1,600円は派遣業界で見れば高水準だが、業務内容によっては安く感じられることも
- 「高待遇」という表現は相対評価。求職者の期待とズレる可能性がある
- 求人広告は、時給だけでなく仕事内容・業界背景とセットで訴求することが重要
仮想通貨業界のように話題性があり、トラブル対応も多い業種ではなおさら、数字よりも中身を重視した求人設計が求められます。