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全国求人情報協会の不参加企業に問われる倫理観
全国求人情報協会は1985年に設立された公益社団法人で、求人広告の適正化や自主規制を推進し、統計データの公表や法改正情報の共有などを行っています。
しかし、求人サイト運営企業の中には、この協会に加盟していない企業も少なくありません。本記事では、その背景や理由、そして未加盟企業に求められる倫理観について考察します。
目次
全国求人情報協会とは
私たちは、求人広告適正化のための自主規制を行うために業界の有志が集まって発足し、社団法人としてこの協会を設立しました。発足以来、求人広告の適正化のために積極的に活動を続け、大きな成果をあげてきたと考えていますが、私たちを取り巻く環境は大きく変わりました。
全国求人情報協会は、人材業界の有志が「法的規制が少ない求人広告分野に自主的なルールを作ろう」という理念で発足しました。
求人広告業界では、労働関係法令の適用が必ずしも十分ではなく、特に求人サイト運営会社には直接的な規制が少ないのが現状です。そのため、業界内で自ら基準を設け、求職者に対して正しい情報を提供する必要がありました。
加盟企業は、労働基準法や職業安定法、男女雇用機会均等法などに関する最新情報を受け取れるほか、法改正時のポイント解説や業界向けの研修会に参加できます。さらに、民間資格である「求人広告取扱資格試験」も実施しており、大手企業の中には資格取得を必須条件にしているところもあります。
加盟企業と未加盟企業の現状
2017年3月14日時点での正会員企業は65社、賛助会員は18社。正会員にはリクルートジョブズ、リクルートキャリア、インテリジェンス(現パーソルキャリア)、マイナビ、学情、エン・ジャパン、ディップ、ディスコ、アルバイトタイムス、ユメックスなど、大手と呼ばれる求人メディア運営企業が多く名を連ねています。
一方、未加盟の企業にもビズリーチ(ビズリーチ運営)、エス・エム・エス(カイゴジョブ運営)、リブセンス(ジョブセンス運営)、ネオキャリア(保育ひろば運営)、ウォンテッドリー(Wantedly運営)、レバレジーズ(バイトーク運営)、セレス(モッピージョブ運営)など、知名度の高いサービスを運営する企業が含まれています。
未加盟企業に多い特徴
未加盟企業には、次のような共通点が見られます。
- 2000年代後半以降にサービスを開始した比較的新しい企業
- 人材業界というよりはITベンチャー寄りの企業文化
- 成果報酬型(成功報酬型)の求人サイトを運営
こうした企業は、全国求人情報協会の存在意義や加盟メリットを十分に理解していない場合も多く、また後述するように加盟を避ける理由もあります。
未加盟となる主な理由
①費用面から入会したくない
正会員として入会するには、入会金10万円と年会費(最低10万円以上)が必要です。売上3億円未満なら10万円、3億〜5億円未満なら30万円と、企業規模に応じて変動します。
大手企業にとっては決して高額ではありませんが、「その金額に見合うだけの直接的なメリットがない」と感じる企業もあります。
②審査面から入会したくない
加盟企業は、最低賃金の明記や適正な広告表記など、一定の基準を守らなければなりません。
これは求職者保護のために重要ですが、広告審査体制のない企業や、人件費削減を優先する企業にとっては負担となります。
特に成功報酬型求人サイトでは、営業やSEO施策を優先し、広告審査を後回しにする傾向があります。結果として、加盟によって「業務効率が落ちる」と感じ、加盟を避けるケースがあります。
③協会の存在を知らない
異業種から人材業界に参入した企業は、全国求人情報協会の存在を知らない場合があります。協会側の広報・勧誘活動が限定的であることも、認知度不足の一因です。
④企業の倫理観
一部の企業は「自分たちは求人メディアではなく、あくまでプラットフォームやツールを提供しているだけ」という立場をとり、媒体責任を回避する傾向があります。
内部に広告審査や虚偽情報をチェックする部署が存在せず、通報窓口を設けていない企業もあります。こうした姿勢は、求職者保護よりも企業都合を優先する姿勢の表れであり、業界全体の信頼性低下につながります。
媒体責任と自主規制の必要性
求人サイトの乱立やブラック企業問題、過労死や長時間労働の問題が社会問題化する中、媒体側の責任が問われる場面は増えています。法律での直接的な規制が少ない分、業界内の自主規制やガイドラインが不可欠です。
全国求人情報協会への加盟は義務ではありませんが、未加盟の場合は外部からの監視や規制が及びにくくなり、虚偽広告や不適切な求人情報を放置できる環境が生まれかねません。
まとめ
スタートアップや小規模運営の求人サイトに加盟を求めるのは現実的ではありませんが、年間売上5000万円以上の規模や業界での影響力がある企業には、協会加盟やそれに準じた自主規制体制が必要です。
過去のDeNA「WELQ」問題が示すように、無規制状態は利用者への被害や企業ブランドの失墜を招きます。今後、職業安定法の改正によって求人情報提供事業者にも適正化が求められる流れは加速します。
人材業界に関わる企業は、高い倫理観と社会的責任を持ち、正しい情報を求職者に届けることが不可欠です。