BLOG
ウォンテッドリーに学ぶ長期実践型インターンシップの問題点
採用手法・採用知識昨年、DMCA申請で炎上したWantedly運営のウォンテッドリー株式会社が2018年2月に人事向けにセミナーを開催し、自社のインターン採用と活用事例の資料が労働搾取ではないかと一部で話題になりました。(関連記事)
クチコミ評判
・人材業界でこの意識、良くないのでは。
・低予算プロジェクトの発表資料。参考になる。
・Confidentialって書かれた資料が挙がってくるの,新しい
・wantedlyってプロダクトは好きなんだけど、会社のイメージ悪い…
・正社員が足りないから安いバイトとしてインターンを使おうという話。これを大っぴらに発表できると考えている会社はやっぱちげーわ
・インターンシップも技能実習生も理念としては素晴らしいのだろうが、日本では安価に使い潰せる若い労働力の調達手段として機能してしまっているのが。というか本来は儲けを出すための制度ではないだろうに
昨年にはエンジニアのインターン生が14時間8000円(時給換算570円)という東京都の最低賃金以下で働かせていたことが話題になっていましたが、現在も続いているのかは不明。
炎上した理由
今回、炎上した理由の一つはインターンシップを就業体験ではなく、低賃金の労働力として考えていたからです。数ヶ月単位の長期実践型インターンシップもベンチャー企業界隈で広まっていますが、少なくとも建前上は学生のための職業訓練とするのが一般的です。
しかし、ウォンテッドリーの場合は最初から人手不足の自社都合を優先した施策としてインターンを導入しており、少人数・小予算でのプロジェクトにおいて大学生が使いやすい(バイト要因)という発想から始まっていることに批判が集中しました。
インターンシップの本来の役割は企業の労働力確保ではなく、大学生の就業経験がメインです。労働力確保が目的なら、アルバイト募集にしたほうが誤解が生まれず親切です。もちろん給与を支払っている以上は学生も対価として労働しなければいけませんが、雑務ばかりを任せているのはインターンとは呼べないと思います。
資料を見る限りミスマッチを減らそうとしてたりフィードバックの努力をしているので実はウォンテッドリーはまだマシな部類です。長期実践型インターンシップで実際に起こっている問題点は大きく二つあります。
問題点①労働法違反も結構ある
大学生からよく聞く不満
①タダ働きだった。
②週3日シフトが必須のため授業に出られず単位を落とした。
③ビジネススキルが身に着くと言われたが、雑用ばかりだった。
④任せていると言えば聞こえはいいが、実際はほったらかしだった。
①は最低賃金法違反。②はブラックバイトと同じく過剰な拘束です。③は求人広告の虚偽記載などなど、その他にもセクハラ・パワハラなどエグイ話も聞きます。
問題点②受け入れ態勢の問題
中小企業やベンチャー企業に長期実践型インターンシップをおススメする人もいますが、大学生を戦力化させるのは容易ではありません。正社員と比較して低い給与で雇用できるものの、社内に教育体制が揃っていないとお互い時間の無駄になってしまいます。
ただでさえ少ない人数の中小企業やベンチャー企業は、大学生を受け入れる体制が未熟です。特に社員数10名以下の会社で積極的にインターンシップを採用している会社には問題が山積みであるケースが見られます。
長期実践型インターンの活用は本来は有効
本来なら長期実践型インターンの活用は非常に有効です。学生にとっても成長できる有意義な職業訓練制度だと思います。日本では1日だけのインターンが主流ですが、アメリカでは長期インターンシップのほうが主流という声も聞くので、そこで働きたいかどうかは選んでいる大学生側の責任。
ウォンテッドリーはプロダクトが有名なので、インターン実績として就職活動のアピールポイントになるでしょう。そうした魂胆がある大学生もいると思うので、低い時給でも問題ないと考える学生は多そうです。
人手不足だから大学生を活用しようとする発想自体は全く問題ありませんが、今回のケースでは「アルバイト募集と言うと学生ウケが悪いから、インターンと言い換えましょう」という意味だと捉えかねない部分があった点が非難された原因でもあります。少なくとも資料だけで判断してしまうと説明不足かな。
まとめ
セミナー資料なので省略した部分も多いと思いますし、もしかしたらセミナーでは口頭で詳しく説明したかもしれませんが、誰でも見られる一般公開の資料にするなら、誤解が生まれないようにもう少し丁寧に書いたほうが良かったですね。
大学生は「せっかくお金を稼ぐならバイトよりも将来に役立つ仕事をしたい」と考えて実戦型インターンを選択します。そうした大学生を裏切らないためにも雑用だけでなく、給与をちゃんと支払って、しっかりフォローしてほしいと思います。