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ウォンテッドリーから学ぶ長期実践型インターンシップの問題点
採用手法・採用知識2018年、ウォンテッドリーが自社のインターンシップ活用事例を公開したところ、「労働搾取ではないか」とSNS上で批判が相次ぎ、炎上を招きました。
本来、インターンは学生の就業体験を目的とした制度ですが、一部の企業では人手不足の安価な労働力として扱われるケースも見られます。
今回は、ウォンテッドリーの事例をもとに、長期実践型インターンシップの課題と企業側が気をつけるべきポイントを解説します。
目次
ウォンテッドリーが炎上した経緯とは?
Wantedly株式会社は2018年、人事向けセミナーで自社のインターン採用と活用事例を発表しました。
しかし、その資料の中には「人手不足を補う安価な労働力としてインターンを活用する」ような意図が読み取れる表現が含まれており、SNS上では批判の声が殺到。
特に以下のようなポイントが問題視されました。
- 最低賃金以下の報酬(14時間勤務で8,000円)
- アルバイトではなくインターンと表現する意図
- 学生を主体とせず、企業都合の人手補填と捉えられる設計
資料自体はConfidential(機密)扱いだったものの、ネット上に出回り、かえって企業イメージを損なう結果となりました。
実際に聞かれる声・評判(抜粋)
- 正社員不足を学生インターンで補うって、それ搾取では?
- ビジネススキルが学べると思ったのに、実態は雑用ばかり
- Wantedlyのプロダクトは好きだけど、会社の印象は最悪
- — SNSや業界関係者の声より抜粋
引用:批判記事削除のウォンテッドリー、14時間8,000円でエンジニアインターンを働かせる
こうした声が広がったことで、「長期インターン=搾取」という誤解を助長した面も否めません。
問題点①:労働法違反の可能性
長期インターンシップは、あくまで教育目的で設計されるべきですが、以下のようなケースは労働法違反のリスクを孕みます。
- 無給・最低賃金以下の報酬(最低賃金法違反)
- 授業に支障をきたす過度なシフト拘束(労働時間規制違反)
- 職務内容と乖離した求人情報(職業安定法違反)
また、社内でのパワハラ・セクハラ事例や、放置型マネジメントも少なくなく、インターンとしての意義を失ってしまっているケースも散見されます。
問題点②:受け入れ態勢の未整備
中小・スタートアップ企業の中には、教育体制やOJTの仕組みが整っていない状態でインターンを受け入れてしまうケースも多くあります。
とくに社員数10名以下の企業では、学生に対する指導やフォローが不十分になりがちで、結果的に学生側にも企業側にも不満が残る“ミスマッチ”が発生します。
インターン本来の意義と活用のあり方
本来、インターンシップは学生の職業理解を深める教育的機会として設けられるものです。
アメリカなどでは長期インターンが一般的で、企業での実践を通じて社会人スキルを養う文化があります。日本においても、建設的な設計・支援があれば、学生のキャリア形成に有効な制度となるはずです。
たとえば、以下のような姿勢が求められます。
- 職業体験としての意義を明確化
- 適切な給与と労働時間の提示
- フィードバックと成長支援を前提とした設計
- 教育機会としてインターン制度を扱うという社内理解
ウォンテッドリーの事例が示した教訓
ウォンテッドリーの資料を読むと、インターンの戦力化だけでなく、ミスマッチ解消やフィードバックの工夫も取り組んでいた様子が見て取れます。
しかしながら「インターン=人件費の安い労働力」と読み取られかねない表現が表に出たことで、本質的な努力よりもネガティブな印象ばかりが拡散してしまいました。
このような結果を招いた背景には、意図の伝え方と制度設計の透明性の欠如があります。
まとめ:大学生を未来の仲間として扱う
学生は「アルバイトでは得られない経験ができるから」との期待を持ってインターンに参加します。
企業側も「インターン=将来の仲間」と捉え、きちんと育成の手間をかけるべきです。
特に、以下の3点は最低限守られるべき基本姿勢です。
- 適切な報酬と労働時間の管理
- 教育的意義を明示した制度設計
- 責任ある受け入れ体制の構築
誤解を避けるためにも、セミナー資料や採用ページでは“学生目線”で丁寧に言葉を選ぶことが重要です。
インターンは企業の将来をつくる人材育成の場。だからこそ、都合の良い労働力としてではなく、未来の仲間として迎え入れる意識が求められています。

